乳児が他者に対して道徳的な行動をとるかは不明だった
大阪大学は6月10日、前言語期にある8か月の乳児が悪者を罰するような行動をとることを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院人間科学研究科の鹿子木康弘准教授、大妻女子大学社会情報学部情報デザイン専攻の宮﨑美智子准教授、大阪大学大学院基礎工学研究科の高橋英之特任准教授、同大大学院人間科学研究科の山本寛樹特任研究員、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の小林哲生上席特別研究員、東京大学大学院情報学環/大学院総合文化研究科の開一夫教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Human Behaviour」に掲載されている。
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これまでの発達研究により、12か月以下の言葉をしゃべれない乳児に、他者の行動の良し悪しを評価するといった道徳的判断能力が備わっていることが広く知られていた。しかし、「道徳的判断ができるといっても、道徳的にふるまうかどうかは保証されない(例:善悪判断ができても、悪いことをする人がいる)」「12か月以下の乳児は運動能力が未発達なため、他者に対して道徳的な行動を示すことができない」という2つの理由から、乳児が他者に対して道徳的な行動をとるか否かは未解決の問題だった。
コンピューターを用いた新規実験手法で、乳児が「いじめを行う悪者を罰する」ことが判明
研究グループは、乳児の視線とコンピューター画面上で生じるイベントを連動させることにより、視線によってコンピューター画面上の悪者を罰することができる新しい実験手法を開発した。そして、5つの実験から、8か月の乳児がコンピューター画面上のいじめを行う悪者を、視線によって罰することを解明した。
これは、乳児が道徳的な行動を行うことを実証したと言え、ヒトが進化の過程で道徳的(あるいは正義的)な行動傾向を獲得した可能性を示唆している。また、この実験手法は、乳幼児研究の新しい実験手法の提案にもつながり、パラダイムシフトとなる可能性がある。
ヒトが進化の過程で正義的な行動傾向を獲得した可能性
今回研究グループによって開発された視線を用いた新技術により、これまでは計測不能だった乳児の道徳的行動を計測することに成功し、8か月児がいじめを行う悪者を罰すること(第三者罰)を行うことが解明された。
「本研究成果は、ヒトが進化の過程でこのような正義的な行動傾向を獲得した可能性を示唆し、ヒトとはいかなる存在かという問いに一石を投じ、さらなる人間理解へとつながることが期待される」と、研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU