拡大視効果を得ることで生じる死角を、俯瞰するように監視
愛媛大学は5月31日、超小型広視野角監視カメラBirdView(バードビュー)の開発に成功したと発表した。この研究は、同大医学部附属病院消化器腫瘍外科の惠木浩之准教授ら、シャープ株式会社、株式会社コスミックエムイーの研究グループによるもの。研究成果は、「Surgical Endoscopy」に掲載されている。
画像はリリースより
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近年ロボット支援手術の保険適用拡大が進み、各疾患領域において、ロボット支援手術症例数が増加している。ロボット支援手術には、3次元映像・多自由度鉗子による操作性向上・手振れ防止機能などの長所がある一方で、触覚の欠如という短所がある。この短所は非常に危険な状況を生む可能性があり、実際に術中の臓器損傷を原因とする合併症が生じたという報告が散見される。そのため執刀医となる外科医は制限される傾向にあり、外科学発展の律速になっている面もある。そこで惠木准教授らは、拡大視効果を得ることで生じる死角を俯瞰するように監視できる、腹壁固定型のカメラBirdViewを開発した。
ロボット支援手術のP1試験実施中、愛媛大学医学部附属病院で
研究グループは、実際にトロッカーから挿入できるサイズへの小型化、牽引力に対する耐久性、熱損傷、ハレーションのコントロール等、さまざまな検証についてブタを用いた動物実験で繰り返し実施。2017年には、ヒトを対象とした第1相試験「腹腔鏡補助下大腸切除術施行時における、超小型広視野カメラシステムの安全性および有用性に関する臨床研究」を行い、安全性の確認を行った。
現在、腹腔鏡下手術における第1相臨床試験が終了し、愛媛大学医学部附属病院でロボット支援手術における第1相臨床試験を行っている。また、消化器外科領域にとどまらず、泌尿器科・産婦人科・呼吸器外科・耳鼻咽喉科で同様の臨床試験を計画。愛媛大学から、安全なロボット支援手術を全国あるいは世界に届けることができると期待しているとしている。
薬事認証を受け、市販の準備中
BirdViewは3月31日に薬事認証を受けた。同大での臨床試験を経て、株式会社メディカルリーダースを販売企業とし、全国に向けて市販する準備を進めている。
安全なロボット支援手術の施行サポートだけでなく、執刀医の制限緩和にも期待
研究グループは、BirdViewについて、「安全なロボット支援手術の施行をサポートするだけでなく、執刀医の制限を緩和することを可能とするデバイスになりうると考える。愛媛大学から、安全なロボット支援手術の確立に大きく貢献できると考えている」と述べている。
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・愛媛大学 プレスリリース