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低侵襲に留置できるIGRTのX線マーカーを開発-北大

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2022年04月28日 AM11:30

腫瘍患部付近へのX線マーカー導入は外径2~2.5mmのカテーテルで行う必要がある

北海道大学は4月27日、(画像誘導放射線治療)に用いられる植込み型病変識別マーカ()として、骨充填剤であるバイオペックス-R(HOYA Technosurgical製、以下、)に金ナノ粒子を均一に複合化させた粉末を作製することに成功したと発表した。この研究は、同大大学院工学研究院の米澤徹教授、宮本直樹准教授、および同大学病院の白土博樹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「ACS Applied Bio Materials」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

放射線治療は、現在、がん治療における主要な治療法の一つであり、手術療法や化学療法と組み合わせて広く用いられている。一方で、放射線を腫瘍の周囲にある正常組織へ照射してしまうと、その照射量に依存する副作用が生じてしまう。そのため、腫瘍部のみに放射線が照射できるシステムが求められている。それに伴い、より強い放射線を用いることができ、治療がより効果的になる可能性が高くなる。しかしながら、人間は常に呼吸をしており、呼吸により臓器の位置が動くために、そのままでは腫瘍部のみに放射線を照射することは困難だ。

IGRTは、放射線照射の時にリアルタイムで患者の画像情報を取得し、腫瘍の位置誤差、呼吸などによる臓器位置の移動を常に補正しながら、腫瘍部位のみに正確に放射線を照射し治療する技術。この技術により正常組織に対する影響をできるだけ少なくしながら、十分な線量を腫瘍部位に照射することができるようになる。この患部の位置補正には、腫瘍近傍に生体親和性が高く、原子番号が大きくX線視認性の高い金を留置するが、従来、このX線マーカーとして1.5~2mmの金粒子が使われていた。これを腫瘍患部付近に導入するためには外径が約2~2.5mm程度のカテーテルを用いる必要がある。今回、研究グループは、これをより低侵襲に行うことを可能にするため、研究に取り組んだ。

骨充填剤粉末と金ナノ粒子を均一に複合化・分散することに成功

研究グループはまず、金イオンのエタノール溶液にバイオペックスを分散させたのち、そのまま加熱して金イオンを還元させた。還元させた金イオンは赤色のナノ粒子に変化した。金ナノ粒子は100nm程度の大きさで、バイオペックスと均一に複合化された状態で得られた。この粉末を遠心分離によって取り出した後、乾燥させた。サブミクロンレベルの金粒子はそれ自体で作ることもできるが、金粒子のみの場合には凝集が起こりやすいために、バイオペックスと混合して練和液に分散する時に融合してしまうことがある。しかし、あらかじめバイオペックスと金ナノ粒子を複合化させた粉体を使ったことで、そのような金の融合は起こらなかった。

21Gの注射針を通して注入し、X線マーカーとして利用できる可能性

次に、このバイオペックス-金ナノ粒子複合体を練和液に分散させて、いくつかの太さの注射針を用いて人体を模擬したゲル内にさまざまな太さの注射針を使って導入し、固定化させた。練和液との混合後、ゲル内に注入した混合液は固体の塊となり、数mmの粒子としてゲルから取り出すことができた。このことは、バイオペックス-金ナノ粒子複合体粉末が、人体内でも固化し、体内に長くとどめておくことができることを示している。

得られた粒子は含んでいる金のためにX線の透過性が低く、X線透過像でその位置を確認することができた。人体を模擬した15cmのアクリル板を通しても充分認識できており、従来の2mm程度の金粒子を用いた場合とほとんど変わらなかった。よって、今後は外径が0.81mmの21Gの注射針で金マーカーを体内に導入できる可能性が出て来た。

実用化に向け研究を推進

今回の研究により得られた粉末は、それを固化する練和剤に分散させることにより、外径が1mm以下の注射針で腫瘍近傍に固定化することが可能となり、非常に低侵襲とすることができた。

今後研究グループは、相対的に金ナノ粒子の量を増やし、より少容量のバイオペックス-金ナノ粒子複合体の導入により、視認性が高いマーカーとなるよう設計していく予定。また、ナノ粒子の大量合成法の開拓を行って実用化に向けて研究を実施したいとの考えを示している。さらに細い針で金マーカーを体内に導入できるよう、得られる金ナノ粒子などの分散性を高めるほか、人体内の金の固定化手段についても検討を重ねていくとしている。

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