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パーキンソン病、簡便・安価な評価用バイオマーカーを開発-神戸大ほか

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2022年04月27日 AM11:45

簡便かつ負担の少ないスクリーニング手法の開発が急務

神戸大学は4月26日、血清を用いた迅速・安価なパーキンソン病評価用のバイオマーカーの開発に成功したと発表した。この研究は、同大バイオシグナル総合研究センターの今石浩正教授、伊原航平学術研究員らと、広島大学大学院医系科学研究科の大黒亜美助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本の人口高齢化率は世界の中でも高水準で推移しており、高齢者の生活の質(Quality of Life:QOL)の低下や介護現場の逼迫が問題となっている。加齢とともに、さまざまな疾患を発症するリスクが増加するが、特にパーキンソン病などの神経変性疾患は、発症者のQOLを著しく低下させることが問題となっている。また、パーキンソン病は2番目に一般的な神経変性疾患であることから、60歳以上の人口の約1〜2%に影響を及ぼしていると考えられている。さらに、パーキンソン病の世界市場だけでも2030年では199億USドル(229兆円、治療薬も含める)と予測されている。

現段階では、パーキンソン病を根治できるような治療薬は存在していないため、早期発見を行うことで進行を止めることが非常に重要だ。また、他方ではさまざまな創薬企業が治療薬の開発に取り組んでいることから、今後より一層の早期発見が重要となることも予測されている。そういった状況から、パーキンソン病に対する簡便かつ負担の少ないスクリーニング手法の開発が急務とされている。さらに、これら初期のスクリーニングには、特に安価で手軽な検査手法が求められている。

血清に含まれるP450、蛍光値の変化検出で疾患の有無を判別

体外から取り込まれた薬物をはじめ、さまざまな物質の酸化反応を触媒する薬物代謝酵素シトクロムP450は、さまざまな種類の疾患の発症時において、体内での発現量が変化することが知られている。これらP450の発現量の変化によって、患者の体内ではP450に関連する物質の量や質が変化すると考えられる。同研究グループでは、疾患の発症によって生体内に生じたP450関連の物質量やそれらの質を簡便に検出する方法、「P450蛍光阻害アッセイ法」を確立している。今回、この手法をパーキンソン病の診断へと適用することに世界で初めて成功した。

「P450蛍光阻害アッセイ法」は、健康な人や患者から採取した血清と12種類のP450、蛍光性基質をそれぞれ混合することで反応を行わせる。このとき、健康な人と患者の血清に含まれるP450に関連する物質の量や質が変化する。健康な人の血清では、P450により、蛍光性基質が反応して蛍光物質が生じるが、患者から回収した血清を反応させると健常者とは異なった反応を示し、得られる蛍光値が変化する。「P450蛍光阻害アッセイ法」はこの変化を検出することで疾患の有無を判別する、これまでになかった新しいリキッドバイオプシー技術だ。

ラット/ヒトいずれも、85~88%の精度で健常者と患者を分類

また、今回の研究では、「P450蛍光阻害アッセイ法」を利用し、パーキンソン病の診断が可能かどうかを評価。具体的には、パーキンソン病のモデルラットと、ヒトパーキンソン病患者の検体に対してP450蛍光阻害アッセイを実施した。

その結果、パーキンソン病モデルラット、およびヒトパーキンソン病患者のいずれについても、85~88%の精度で健常者と患者を分類することができたという。

パーキンソン病診断に応用の可能性、使用血清は30μl程度と少なく比較的安価に検査

今回の結果から、P450蛍光阻害アッセイ法がパーキンソン病の診断に応用できる可能性があることが示された。P450蛍光阻害アッセイ法は、使用する血清が30μl程度と少なく、比較的安価に検査が行えるため、パーキンソン病のスクリーニング検査として有用であると考えられる。

今後は、さらに規模を大きくした臨床性能評価試験を実施し、実用化を目指した研究を行っていく予定だと、研究グループは述べている。

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