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糖尿病性潰瘍、皮下脂肪の細胞老化が原因の可能性-北大ほか

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2022年04月25日 AM11:45

SASPで組織修復・再生を促す「老化細胞」、蓄積すると慢性炎症を起こし有害化

北海道大学は4月22日、糖尿病の皮下脂肪でおこる細胞老化が難治性の創傷を引き起こす可能性を新たに見出したと発表した。この研究は、同大大学院保健科学研究院の千見寺貴子教授、札幌医科大学医学部解剖学第2講座の齋藤悠城講師および札幌医科大学大学院医学研究科博士課程の北愛里紗氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Communications Biology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

近年、「」という現象が注目を集めている。細胞老化は、細胞にダメージが加わった時、異常な増殖を防ぐための生体防御システムの一つで、自らの増殖を止めるとサイトカインやケモカインなどさまざまな因子の分泌現象(細胞老化関連分泌形質:)を起こす。このSASPによって、老化細胞は免疫細胞を誘導し、また自らを貪食させることでクリアランスされて、組織の修復・再生を促す。しかし、老化細胞が損傷部位に蓄積することで、慢性炎症を引き起こすことが報告されて以降、慢性炎症で有害化する細胞老化の解明に注目が集まっている。

糖尿病マウス、創傷治癒過程の皮下脂肪組織SASP因子発現パターンが正常と異なる

今回、研究グループは、糖尿病でこの細胞老化の制御機構が異常となることで創傷治癒が遅延することが、糖尿病性潰瘍の原因ではないかと考え、研究を行った。

まず、2型糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)の背部に創傷を作成し、治癒過程(2日後、8日後)の創部皮膚および創部皮下脂肪組織を採取した。これを解析したところ、糖尿病モデルマウスとコントロールマウス共に細胞老化因子およびSASP因子の発現亢進を認めた。検出した複数の因子について詳細な分析を行ったところ、正常な創傷治癒と糖尿病モデルでの創傷治癒の間では、創部皮下脂肪組織において細胞老化因子やSASP因子の発現パターンが大きくことなることが明らかになった。この結果から、皮下脂肪における細胞老化のタイプの違いが創傷治癒に影響を与えているのではないかと考えられた。

次に、糖尿病の皮下脂肪が創傷治癒を阻害しているのかを明らかにするために、糖尿病モデルマウスの皮下脂肪を正常なマウスの皮下に移植して、創傷治癒のプロセスを観察した。すると、糖尿病モデルマウスの皮下脂肪が移植されたマウスでは創傷治癒が遅延すると同時に、皮下脂肪の細胞は創傷部にはほとんど遊走しないことがわかった。この結果から、皮下脂肪の細胞は創部まで遊走して創傷治癒に影響するのではなく、SASPによる分泌因子によって創傷治癒を制御していることが推察された。そこで、創傷部の皮下脂肪をそれぞれ正常および糖尿病モデルマウスから採取して分泌する因子を解析したところ、創傷後2日の時点で正常の皮下脂肪からはで大量のサイトカインや成長因子を含むSASPを分泌する一方、糖尿病では分泌されるSASP因子の種類が少なく、さらに正常とは異なる種類のSASPを分泌することがわかった。

糖尿病のSASPは線維芽細胞の遊走を抑制して、傷の治りを制限していた

最後に、これらのSASP因子を含む培養液で正常な皮膚線維芽細胞を培養し、培養器の中で人工的に創傷を作製したところ、正常のSASPは線維芽細胞の遊走を高めて傷の治りを促進する一方で、糖尿病のSASPは線維芽細胞の遊走を抑制して、傷の治りを制限することがわかった。

今回、研究グループは、創傷部の皮下脂肪で起こる老化細胞が、正常な皮膚の創傷治癒に促進的に機能することを明らかにすると同時に、糖尿病では有害な老化細胞が皮下脂肪に蓄積して、創傷治癒を阻害することを明らかにした。「今後、より詳細な老化細胞の特性の解析を続けることで、難治性の糖尿病性潰瘍のさらなる病態解明と新しい治療法の開発につながることが期待される」と、研究グループは述べている。

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