ATACH-2試験副次解析、血圧推移特徴を客観的に分類
国立循環器病研究センターは4月12日、Antihypertensive Treatment of Acute Cerebral Hemorrhage(ATACH)-2試験に基づく副次解析を発表した。この研究は、同大研究センターの田中寛大脳血管内科医師、古賀政利脳血管内科部長、豊田一則副院長らと、海外研究者の研究グループによるもの。研究成果は、「Stroke」オンライン版に掲載されている。
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脳出血は、日本の脳卒中全体の約2割を占め、有効な治療法の確立が待たれる疾患の一つだ。効果が期待される治療法として、発症早期の積極的降圧療法が挙げられる。
研究グループは、研究者主導国際共同試験ATACH-2を実施。ATACH-2では、急性期の積極的な降圧が脳出血の臨床転帰を改善するかを調べるため、発症から4時間半以内の脳出血患者1,000例を積極降圧群(収縮期血圧110〜139mmHg)と標準降圧群(140〜179mmHg)に1:1の割合で無作為に割り付け、24時間、目標血圧範囲を維持した。試験の主要評価項目である3か月後の死亡または高度機能障害の割合(modified Rankin Scale4–6に相当)は、両群とも約38%で有意差を認めなかった。この成果はNew England Journal of Medicine誌に掲載されている。
ATACH-2試験全体では、脳出血患者における積極降圧療法の有用性は示されなかったが、実際の臨床では脳出血患者の降圧療法に対する反応は一様ではない。ある患者は降圧療法によく反応する一方で、降圧療法への反応が悪く高用量の降圧薬を必要とする患者もいる。研究グループは、ATACH-2のデータで血圧推移の特徴を客観的に分類し、観察することができれば、最適な目標血圧範囲の決定に貢献できると考えた。
GBTMを用いて、収縮期血圧の推移を4グループに分類
今回、ATACH-2の脳出血超急性期の血圧推移の特徴を再現性よく分類するために、group-based trajectory modeling(GBTM)と呼ばれる手法を用いた。GBTMは似ている軌道の一群を識別して分類する手法であり、心理学や犯罪学での発達軌道の研究に応用されてきた。今回は、このGBTMを脳出血急性期の血圧推移の特徴を識別・分類するために応用した。
GBTMの結果、収縮期血圧の推移について4つの特徴的なグループに分類された。具体的には、グループ1(収縮期血圧:中、298例、積極降圧群の占める割合11.1%)、グループ2(収縮期血圧:中→低、395例、積極降圧群の占める割合88.6%)、グループ3(収縮期血圧:高→低、134例、積極降圧群の占める割合85.1%)、グループ4(収縮期血圧:高、173例、積極降圧群の占める割合1.7%)である。
グループ3(収縮期血圧:高→低)、降圧薬が効きづらい重症高血圧例が多く含まれていた可能性
この4つのグループのうち、収縮期血圧が>210mmHgから<140mmHgまで低下する(血圧の低下幅が大きい)グループ3では、収縮期血圧が180mmHg程度から<140mmHgまで低下するグループ2と比べて、死亡または高度機能障害(オッズ比2.29、95%信頼区間1.24–4.26)、急性腎障害(オッズ比3.50、95%信頼区間1.83–6.69)、腎臓系の有害事象(オッズ比2.84、95%信頼区間1.22–6.62)、心血管系の有害事象(オッズ比2.26、95%信頼区間1.10–4.64)のリスクが有意に上昇していた。
収縮期血圧が180mmHg程度から150–160mmHgへ低下するグループ1、200mmHg程度から160–170mmHgへ低下するグループ4では、これらのリスクの有意な上昇がなかったという。
グループ3の85.1%が積極降圧群にランダム化されていたが、このグループでは、他の3つのグループと比べて、降圧薬の使用量が最も多く、また、使用された降圧薬の種類が最も多いという特徴があった。グループ3には降圧薬が効きづらい重症高血圧例が多く含まれていた可能性が示唆される。
脳出血患者の高血圧の重症度に合わせて、目標血圧範囲最適化へ
ATACH-2では積極降圧群と標準降圧群の2群へとランダム化されたが、GBTMの結果、収縮期血圧の推移について4つの特徴的なグループが分類された。その中に、目標血圧範囲を達成するために高用量の降圧薬、複数の高圧薬で治療された重症の高血圧患者群が存在し、この患者群では死亡または高度機能障害、心腎合併症のリスクが高いことが示唆された。
脳出血患者の高血圧の重症度に合わせて、目標血圧範囲を最適化する必要性があると考えられる、と研究グループは述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース