脳の記憶中枢「海馬」の小領域「CA2」の機能を明らかに
独立行政法人 理化学研究所は2月19日、マウスを用いて脳の記憶形成の中枢である海馬のCA2と呼ばれる領域の機能を明らかにしたと発表した。
今回の研究成果は、理研脳科学総合研究センター 神経回路・行動生理学研究チームのトーマス・マックヒュー氏らによるもの。米科学雑誌「Journal of Neuroscience」オンライン版に掲載される。
(画像はプレスリリースより)
記憶の形成と更新に重要な役割を持つCA2
海馬は記憶や空間学習に関わる脳の器官で、特に記憶の形成や、現在得た情報と過去の記憶とを比較する場合に重要な役割を果たしている。
海馬はいくつかの小さな領域が連結した形で構成されているが、その1つであるCA2という領域は、サイズが小さいこともあり、隣にあるCA1やCA3と似た機能を有するものと考えられ、長い間、注目されてこなかった。
同研究チームはマウスを用いて、違う環境に移動したときに、CA1・CA2・CA3それぞれの領域の神経細胞がどのような動きを示すかを調べた。その結果、CA2は、CA1やCA3とは全く異なった性質を持ち、記憶している過去の環境と現在の環境のわずかな違いにより、活動パターンを変化させることが明らかになったという。これにより、CA2は記憶の形成と更新に重要な役割を持つことが示された。
精神疾患とCA2の関係解明に期待
今回得られた成果は、CA2を対象とした脳科学研究のみならず、ヒトの脳の理解にもつながるとされる。統合失調症や躁うつ病の患者は、初期の段階でCA2に異常が生じることが知られているが、今後研究が進むことにより、CA2と精神疾患の関係がより明らかになるものと期待される。(鈴木ミホ)
▼外部リンク
独立行政法人 理化学研究所 プレスリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2014/