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血中CRP濃度が高いほど、がん罹患リスク「高」-国がん

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2022年04月05日 AM11:00

肥満や生活習慣などの影響による慢性微小炎症、発がんに関与するか

国立がん研究センターは4月1日、健診などで提供された40~69歳の男女約3万4,000人の血液について、約15年間追跡した結果に基づき、慢性微小炎症マーカーである血中CRP濃度とがん罹患リスクとの関連を調べ、その結果を発表した。この研究は、同センターがん対策研究所予防関連プロジェクトの多目的コホート(JPHC)研究グループによるもの。研究成果は、「British Journal of Cancer」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

細菌やウイルスに感染すると、体内では、異物などを除去するために免疫細胞が活性化し、その結果として発熱などの急激な炎症反応が起こる。急激な炎症は、細菌やウイルスから体を守るために重要な反応である一方、その一連の反応の中で、細胞に障害を及ぼす活性酸素などがつくられると、発がんにつながることが知られている。近年、興味深いことに、細菌やウイルスに感染していなくても、肥満や生活習慣などの影響により慢性的かつ微小な炎症(慢性微小炎症)が体内で生じていることが報告されている。しかし、慢性微小炎症が、感染による炎症と同様に発がんに関与するかどうかは明らかではない。

40~69歳の男女約3万4千人が対象、高感度CRP検査を使用

研究対象は、平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所管内(呼称は2019年現在)在住で、多目的コホート研究のベースライン調査のアンケートの回答があり、健診などの機会に血液を提供した40~69歳の男女約3万4,000人。平成21年(2009年)まで追跡した結果に基づき、0.04mg/L~5mg/LのCRP濃度を検出できる高感度CRP検査を用いて、慢性微小炎症マーカーとしての血中CRP濃度とがんとの関連を調べた。

部位別解析では大腸がん、、乳がんなどが有意に関連

15.6年(中央値)の追跡期間中に、3,734人のがん罹患が確認された。がんに罹患したグループと比べるため、対照グループとして、同じ約3万4,000人の中から、4,456人を無作為に選んだ。がんに罹患する前に保存された血液を用いて、血中CRP濃度を測定し、血中CRP濃度によって、人数が均等になるように4つのグループに分けた。血中CRP濃度が最も低いグループを基準として、他のグループにおける、その後のすべてのがんの罹患や部位別のがん罹患との関連を調べた。

解析では、年齢、性別、喫煙状況、飲酒状況、身体活動量、がん家族歴の有無、糖尿病の既往の有無、体格(BMI)など、がんと関連する要因を統計学的に調整し、これらの影響をできるだけ取り除いた。また、男女別の解析も行い、女性の乳がんや子宮がん、卵巣がんの解析では、閉経の有無や閉経年齢、出産数、初潮年齢、ホルモン剤の服用の有無についても統計学的に調整した。

その結果、血中CRP濃度が上昇するにつれて、統計学的有意に、がん全体の罹患リスクは高くなることがわかった。がんの部位別に行った解析では、、肺がん、、白血病において、血中CRP濃度が上昇するにつれて、統計学的有意に罹患リスクは高くなった。

肥満に関係なく、生活習慣などの影響により生じる慢性微小炎症の関連を示唆

今回の結果は、比較的BMIの高い欧米の複数の研究結果を統合したメタアナリシスの結果と一致していた。欧米の先行研究における研究対象集団の平均BMIは、25.9~28.9kg/m2。今回の研究対象集団の平均BMIは、23.6kg/m2と比較的低く、また、今回の研究において、BMIが正常範囲内の集団に限定した解析においても、血中CRP濃度が高い人では、がんに罹患するリスクが高いことが示された。

このことから、慢性微小炎症を引き起こす原因としてもっともよく知られている肥満に関係なく、生活習慣などの影響により生じる慢性微小炎症が、がんの罹患リスクに関連していることが示唆された。今回の研究は、世界的に見て肥満の割合が少ないアジア人を対象とした初めての報告であるという。

慢性微小炎症は、感染症により生じる急激な炎症における発熱等などの症状は現れないものの、急激な炎症と同様の働きが体内で起きていることが基礎研究から報告されている。研究結果は、症状は見られない慢性微小炎症も、発がんにつながることを示唆した。

胆道がん、腎がん、、分析した症例数少ないため今後の研究の蓄積が必要

比較的頻度の低いがんを含む18部位にわたり、血中CRP濃度とがん罹患との関連を検討した。欧米の研究においても、大腸がん、肺がん、乳がんにおいて血中CRP濃度の上昇とがん罹患リスクの上昇の関連が報告されており、今回の結果と一致していた。一方、「研究で関連が観察された胆道がん、腎がん、白血病に関する研究は少なく、また今回分析に用いた症例数が比較的少ないこともあり、今後、さらなる研究の蓄積が必要」としている。

また、研究グループは研究の限界点として、抗炎症薬の服用や何らかの感染の有無については聞いていないため、これらの影響については考慮できないこと、一部のがんにおいては症例数が少ないことなどを挙げている。

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