20~79歳男女対象Web調査、4つの予防行動と20の情報源利用との関連を経時的に調査
東北大学は4月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報源の種類と人々の予防行動との関連を調べた結果を発表した。この研究は、同大東北大学大学院歯学研究科の草間太郎助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Healthcare」電子版に掲載されている。
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COVID-19予防では、マスクの着用・換気・ソーシャルディスタンスなどの予防行動の遵守が依然として重要だ。過去の研究では、予防行動の遵守に対して、メディアなどの情報源の利用が影響することが示唆されていた。しかし、COVID-19に対する予防行動について、細かな情報源の分類を用いて複数の予防行動との関連を明らかにした研究はほとんどなかった。
そこで今回の研究では、COVID-19に対する4種類の予防行動(「マスク着用」「部屋の換気」「ソーシャルディスタンス」「人混みを避ける」)について20種類の情報源の利用との関連を経時的な変化を考慮して明らかにすることを目的とし、20~79歳の男女を対象としたWeb調査を用いて縦断研究を実施した。
対象者は、「日本における新型コロナウイルス問題による社会・健康格差評価研究」の2020年8~9月調査に参加した人のうち、「日本における社会と新型タバコに関するインターネット調査」の2021年2月調査にも継続して参加した人。結果変数として2020年・2021年調査時点での4種類のCOVID-19に対する予防行動(「マスク着用」「部屋の換気」「ソーシャルディスタンス」「人混みを避ける」)の遵守の状況を用いた。予測変数として、2020年時点での人物・機関ベースの情報源(政府や医療者など)・メディアベースの情報源(テレビやSNSなど)の利用および調査時期(2020年、2021年)を用いた。共変量は性別・年齢・所得・学歴・世帯人数・ヘルスリテラシー。分析は、一般化推定方程式を用いて、共変量を調整したうえで、各情報源の利用の有無によって、各予防行動を遵守している人の割合が何%異なるかを95%信頼区間とともに算出した。
予防行動2種類以上で高い遵守割合と関連の情報源、「医療従事者」「政府・自治体」「Twitter」など
対象者1万8,151人の平均年齢は51.7歳(SD=15.9)、男性が51.3%だった。2020年時点での各予防行動を遵守している人の割合は、マスク着用:86.2%、部屋の換気:46.9%、ソーシャルディスタンス:45.4%、人混みを避ける:62.6%となった。
一般化推定方程式による分析の結果、個人の特性による影響を除外した上で、2つ以上の予防行動で遵守している人の割合が高いことと関連していた情報源は「医療従事者」「専門家」「政府・自治体」「Twitter」「ネットニュース」「テレビ(ニュース)」だった(p<0.05)。
情報源の種類により提供内容に「ムラ」があった可能性も
同研究から、特定の情報源を利用していることが、COVID-19に対する予防行動を遵守していることと関連していたことが明らかになった。機関やメディア等を通じた情報の提供が、予防行動の遵守に重要な役割を果たしていたと考えられるという。
一方、4種類すべての予防行動と関連していた情報源もなかったことから、提供している情報の内容が包括的ではなく、情報源の種類によって提供していた内容に「ムラ」があった可能性があるとしている。
すべての人々に有益な情報を届ける体制構築が重要
人物や機関・メディアによる情報の提供は、COVID-19に対する予防行動の遵守に対して重要な役割を果たしていた可能性がある、しかし、これらの情報源を利用していない人が一定数いることや、提供された情報に有益な情報が含まれていないことが、予防行動の遵守の低下につながる可能性もある。
COVID-19に関して、すべての人々に有益な情報が届くようなマルチチャネルによる情報の提供体制の構築が重要だと考えられる、と研究グループは述べている。
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