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精子形成時の減数分裂に重要な遺伝子としてFBXO47を発見-熊本大

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2022年03月23日 AM11:45

減数分裂の過程で相同染色体の対合が安定に保たれる仕組みは不明点が多い

熊本大学は3月17日、精子の形成に必要な減数分裂をコントロールする新しい遺伝子FBXO47を発見したと発表した。この研究は、同大学発生医学研究所の石黒啓一郎教授、丹野修宏研究員、竹本一政研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「iScience」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

卵巣や精巣では減数分裂と呼ばれる特殊な細胞分裂が行われて卵子や精子が作り出される。石黒啓一郎教授の研究グループは、先行研究で減数分裂のスイッチを入れる遺伝子MEIOSINを発見した。MEIOSINにより数百種類におよぶ精子・卵子の形成に関わる遺伝子が一斉に働くことを明らかにしたが、それらの中には機能未解明のまま、まだ十分に解明されていない遺伝子が多く残されていた。そして、その一つである正体不明の遺伝子FBXO47は、精巣内での特異的発現パターンやMEIOSINの制御下に置かれている状況証拠から、減数分裂や生殖発生の過程で何らかの重要な働きを担う可能性が示唆されていた。

卵巣や精巣では減数分裂の「相同染色体の対合」と呼ばれる過程で、父方、母方に由来する2本の相同染色体がペアをなして合体した二価染色体を形成することが知られている。この相同染色体の対合は、減数分裂組換えと呼ばれるDNA配列情報の交換によって母方DNAと父方DNAとの間で遺伝情報の部分的な交換が行われるために必須のプロセスで、同じ両親から生まれた兄弟姉妹の子どもの間でも微妙に異なる特徴を持つように遺伝的多様性を生み出す仕組みとして働く。しかし、減数分裂の過程で相同染色体の対合を安定に保つために働く因子やそのメカニズムの詳細は不明な点が多く、その機能破綻は不妊症などの生殖医療とも直結する重要な問題でありながらあまりよく解明されていない課題だった。

FBXO47欠損マウスは精子が作られず不妊に

今回、同グループの丹野修宏研究員、竹本一政研究員らは、MEIOSINによって活性化される機能未解明遺伝子の一つであるFBXO47についてより詳細な解析を行った。遺伝子発現の定量解析や発現パターンの解析により、FBXO47遺伝子は精巣内の精母細胞において特異的に発現していることや減数第一分裂の初期のステージで働いていることを突き止めた。さらに質量分析法を駆使した解析により、FBXO47は精母細胞において微量かつ一過的に発現して機能を発揮していることが判明した。

そこで、ゲノム編集によりオスのマウスのFBXO47遺伝子の働きをなくした疾患モデル動物を作製して検討を行ったところ、精母細胞における減数分裂の過程で、いったんは見かけ上相同染色体の対合が起きるものの、その対合状態が安定に維持できなくなることが判明した。その結果、FBXO47遺伝子を欠損した精母細胞は減数分裂組換えが上手く起こらなくなるため、減数分裂のプロセスを完了できずにやがて死滅してしまうことや、精子形成ができなくなり、不妊となることが判明した。

FBXO47は相同染色体の対合状態の安定化メカニズムに働く

したがって、減数分裂の過程でFBXO47は「相同染色体の対合」状態を安定に維持するメカニズムに必須の役割を果たしていることがわかった。なお、FBXO47の働きをなくした卵巣では特に影響は出なかったことから、卵巣にはFBXO47と同じ働きをする別のバックアップの仕組みが備わっていることが示唆された。

今回の研究成果は、疾患モデル動物を用いて検証されたものだが、FBXO47遺伝子はヒトにも存在することがわかった。ヒトに見られる不妊症は原因が不明とされる症例が多く、今回の発見は、特に無精子症や精子形成不全を示す不妊症の病態の解明に資するものと期待される。また、MEIOSINの指令下で働くことが予想される他の機能未解明の遺伝子の働きについては、まだ十分に解明されていない。研究グループは、「今後、卵子・精子の形成過程におけるこれら他の遺伝子の働きも同時に解明することで、生殖医療に大いに貢献できると期待される」と、述べている。

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