bLFがRAにおける炎症や骨破壊に及ぼす影響やメカニズムは不明だった
広島大学は3月11日、リポソーム化ウシラクトフェリン(LbLF)が関節リウマチ(RA)モデルマウスの関節の炎症と骨破壊の進行を抑制するメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科 口腔顎顔面病理病態学研究室の宮内睦美教授、髙田隆名誉教授を中心とした研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。
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RAは、持続的な炎症と滑膜線維芽細胞の増生により、関節軟骨や骨の不可逆的な破壊と変形をもたらす自己免疫疾患である。
ラクトフェリン(LF)は、安全性の高い天然物質で、抗炎症作用、免疫調節作用、抗腫瘍作用などの多彩な作用がある。近年、ウシラクトフェリン(bLF)が慢性持続性の感染症である歯周炎の炎症と骨破壊を抑制することが報告されたが、bLFがRAにおける炎症や骨破壊に及ぼす影響や、そのメカニズムは不明だった。
研究グループはこれまでに、LbLFの経口投与がTNF-α産生の阻害を通じて、細菌のリポ多糖(LPS)刺激によって誘導される歯槽骨の吸収を、有意に減少させることを明らかにしてきた。今回、歯周病と同様に炎症による骨破壊を特徴とするRAにもbLFが有効だと考え、SKGマウス(RAモデルマウス)を用いて、RAの病態進行に対するLbLF経口投与の効果を検証した。
LbLF投与によりRA発症マウスの足首関節の腫れと骨の破壊を抑制
RA発症SKGマウスにLbLFを経口投与すると、足首関節の腫れと骨の破壊を著しく抑制した。組織学的にも、パンヌス形成および破骨細胞による骨の破壊が抑制されていたという。さらに、マウス脾臓から単離されたTh17細胞と制御性T細胞の間のバランスを改善した。
bLFがTRAF2と結合してTNF-αの作用を遮断しサイトカイン産生を抑制
また、bLFはNF-κBおよびMAPK経路を阻害することにより、滑膜線維芽細胞からのNF-κB産生を抑制。さらに、bLFはその受容体であるLRP1を介して滑膜線維芽細胞の細胞内に入り、TRAF2自体またはTRAF2複合体に結合することでTNF-αの作用を遮断し、TNF-αをはじめとするサイトカイン産生を抑制することが明らかとなった。
これらの結果から、RA患者がサプリメントとしてbLFを摂取することで、RAの進行抑制に有益な影響を与える可能性が示唆された。
bLFとTRAF2の結合部位を標的としたペプチド医薬の開発を目指す
今回の研究成果により、LbLF経口投与がRAモデルマウスにおけるTNF-α産生を抑制し、Th17細胞と制御性T細胞のバランスを改善することで、RAの病態進行が軽減されることが明らかにされた。
「bLFの抑制効果には、bLFとTRAF2の結合が重要な役割を果たしていた。現在、bLFとTRAF2の結合部位を明らかにし、その部位を標的としたペプチド医薬の開発のための研究を展開中だ」と、研究グループは述べている。
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・広島大学 研究成果