ホスト側の新型コロナ易感染性・重症化要因の評価を目的に調査
国立成育医療研究センターは3月11日、感染者の易感染性や重症化要因を評価する目的で、新型コロナウイルス感染症患者受け入れ病院である同センターのハイリスク医療従事者を対象として調査を行ったところ、ビタミンDの欠乏が顕著にみられたと発表した。この研究は、同センターの「ナショナルセンター職員における新型コロナウイルス感染症の実態と要因に関する多施設共同観察研究」グループによるもの。研究成果は、「BMJ Nutrition, Prevention & Health」にオンライン掲載されている。
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新型コロナウイルス感染症の最大の特徴は、ウイルス側の感染性および病原性の変化に加え、感染者(ホスト側)の年齢や基礎疾患などによる病状の多様性にある。研究グループはこの点に着目し、ホスト側の易感染性もしくは重症化要因を評価するために、感染防御能力低下、動脈硬化、耐糖能異常、肝・腎機能障害、栄養低下、骨髄機能低下のスクリーニング調査を行った。
ハイリスク医療従事者361人、多くでビタミンD不足が判明
調査は2021年3月1日から3月5日に、同センターのハイリスク医療従事者361人(男性87名、女性274名)を対象として実施された。なお、2021年1月8日から3月21日まで首都圏4都県に緊急事態宣言が発令されていた。
調査の結果、顕著に異常を認めたのはビタミンDであり、性別、年齢を問わず多くの研究参加者で不足していた。ビタミンD不足・欠乏状態は、臨床検査(SRL)の基準値により判定された。先行研究により、新型コロナウイルス感染症流行前から、日本人を含むアジア人の70%にビタミンDが不足していることが指摘されていたが、今回の研究では約90%の研究参加者にビタミンDが欠乏していた。
適度な日光浴・ビタミンD補充が重要である可能性
ビタミンD欠乏が多く見られた原因の一つとして、新型コロナウイルス感染防御対策や、医療従事による長期間の室内生活が紫外線吸収の低下を招いたことが考えられた。活性化する前のビタミンD3は体内のコレステロールから皮膚で紫外線を受け合成されるか、経口摂取(食事、サプリメント)により腸管で吸収され補充される。さらに肝臓(25(OH)D3)と腎臓(1.25(OH)2D3)を経由して活性型となり、生体内で作用する。活性化されるまでの経路においてビタミンDを補充する方法はまちまちだが、日光(紫外線)曝露、経口摂取とそれに加え薬剤(活性型ビタミンD3製剤)の補充により免疫能力の改善、骨粗しょう症の予防が期待される。
研究グループは、「この情報は医療従事者を対象とした調査結果だが、コロナ禍で長期間の屋内生活をしている者は、適度の日光浴やビタミンDの補充(食事、サプリメント、薬剤)をし、ビタミンD不足による、感染防御能力の低下、骨代謝の低下と運動不足(骨刺激不足)による骨粗しょう症や、骨折への注意が必要だ」と、述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース