■AI用い遠隔服薬指導も
3自治体は、幅広い分野でICTなどの先端的技術を活用し、地域課題を解決する内閣府の「スーパーシティ構想」に応募。スーパーシティ型国家戦略特区には指定されなかったものの、人口減少や少子高齢化に直面している地方部での健康や医療の課題解決に焦点を当てた「デジタル田園健康特区」に指定された。
国家戦略特区として、先駆的にデジタル化や規制改革が行われる計画で、健康医療分野のタスクシフトや健康医療情報の連携、予防医療・AI活用、移動・物流サービスの共通テーマを設定し、3自治体の連携を通じて先駆的事業に取り組む。
移動・物流サービスでは、高齢者の地域住民の生活を支える移動支援サービスと医薬品の配送サービスの提供に向け、タクシーを活用した非過疎地域における医薬品の貨客混載運送が進められる計画だ。
現行のルールでは、タクシー事業者がタクシー車両を用いて貨物と旅客の運送を一緒に行う場合は、「発地と着地がタクシー事業の営業区域内で、過疎地域とすること」が要件となっており、茅野市が貨客混載運送を行える許可条件について、利用頻度が高く収益が見込まれる医薬品配送に限り、発地・着地の双方が非過疎地域でも実施可能とするよう提案していた。
茅野市内は訪問看護を活用した在宅医療の利用機会が広がっており、医薬品配送業者が対応できないケースが発生している。もともと観光用途でタクシーが多く利用されていることから、特区ではタクシーを医薬品の貨客混載運送として活用していくことを検討する。サービス提供開始に向け、医療機関や薬局とも今後連携を図るとしている。
患者の健康管理におけるAI、チャット機能を活用した遠隔服薬指導も推進していく。薬剤師が会員制交流サイト(SNS)を用いて患者とのコミュニケーションを通じ、日々の健康状態や服薬状況などを管理。患者が身に付けたウェアラブル機器や自ら測定したバイタル情報をもとにアルゴリズムAIが作動し、患者に異変があった場合には遠隔で医師に指示を求めるというイメージだ。
また専門調査会は、スーパーシティ型国家戦略特区の指定区域に大阪市とつくば市を指定することを了承した。大阪市は、指定区域内の医療機関で自由診療・院内処方を前提に、海外既承認・国内未承認薬の使用を可能とするサービスの実現を目指す。
国内未承認薬を処方するためには、医師が個人輸入をする必要があるが、現行の法規制では医師が自身の患者に対して用いるために個人輸入することとされている。特区では医療機関が医薬品の輸入手続きを行えるようにする。