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原発性免疫異常症、43年間の国内移植全症例の治療成績まとめを発表-東京医歯大ほか

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2022年03月10日 AM11:00

IEIに対する日本での造血細胞移植症例、43年間747例の後方視解析を初めて実施

東京医科歯科大学は3月9日、原発性免疫異常症に対する国内移植全症例を対象とする後方視解析を実施した結果を発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野の宮本智史大学院生と森尾友宏教授、茨城県小児・周産期地域医療学講座の今井耕輔准教授との研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Clinical Immunology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

原発性免疫異常症(Inborn errors of immunity:IEI)は、遺伝子の異常により先天的に免疫の異常をきたす疾患の総称。症状は広範にわたり、重症感染症や日和見感染症だけでなく、自己免疫性疾患、自己炎症性疾患、アレルギー性疾患、悪性腫瘍などさまざまな異常をきたす。IEIの中でも重度の細胞性免疫の障害を示す疾患において、造血細胞移植は根治療法として国内外を問わず実施されている。日本では1974年に初めて重症複合免疫不全症()に対して実施され、2016年までに747例が造血細胞移植を受けた。研究グループは今回、日本造血・免疫細胞治療学会の遺伝性疾患ワーキンググループ事業の一環として、日本造血細胞移植データセンターの「造血細胞移植および細胞治療の全国調査」に基づく移植登録一元管理プログラム(TRUMP)のデータを用い、43年間にわたる日本でのIEIに対する造血細胞移植症例の後方視解析を初めて実施した。

SCIDにHLA一致臍帯血移植は有効、早期診断・感染なしでの移植が重要

まず、SCID 181例に対する解析では、最も成績が良いとされるHLA一致同胞からの移植成績(10年生存率:91%)と比較して、HLA一致臍帯血移植はほぼ同等(10年生存率:91%)であることが判明した。欧米で成績が劣るとされる臍帯血移植だが、日本においてはHLA一致同胞が不在の場合の代替として有用であることが示された。また、移植時期が遅い場合(生後4か月以上)や移植時に感染症が合併している場合に成績が不良であることが明らかになり、早期に診断し感染がない状態で移植することの重要性が示された。

SCID以外は非血縁骨髄移植も有用、臍帯血移植は再移植が多い

また、SCID以外のIEI 566例において、非血縁骨髄移植はHLA一致同胞からの移植に次いで有用であることが示された(10年生存率:79% vs 81%)。日本において多く実施されている臍帯血移植では、再移植が多いという実態も明らかになった。さらに、より副作用が少ない強度減弱前処置による移植成績の有用性も示された。

SCIDに対する新生児スクリーニングの重要性を裏付け

今回、研究グループが国内で実施されたIEIに対する造血細胞移植の全症例解析を初めて実施したことで、日本での治療実態が明らかになった。同研究の中で、早期診断・早期治療のためのSCIDに対する新生児スクリーニングの重要性が再確認され、研究グループは、「日本全国での拡充が望まれる」と指摘している。またIEIは希少疾患であり、今回の研究を通して多数例の後方視解析をしたことで得られた知見は、今後の治療戦略を構築する上で非常に重要だ。「このような良質な知見を日本から世界に向けて発信できたことも大変意義がある」と、研究グループは述べている。

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