明治保有の乳酸菌OLL1073R-1株、さまざまな免疫調節活性の報告
順天堂大学は2月25日、乳酸菌OLL1073R-1株が産生する菌体外多糖(EPS)が、がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を高めることを発見し、そのメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大、明治ホールディングス株式会社、東京大学、仏パスツール研究所などの研究グループによるもの。研究成果は、「Cancer Discovery」オンライン版に掲載されている。
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免疫チェックポイント阻害薬は、さまざまながん種に対して治療薬として用いられている一方で、治療効果が不十分な症例も存在することが知られている。近年、がん患者の腸内細菌や細菌が産生する代謝物が治療効果に関わると明らかになったことで、腸内細菌叢を変化させたりプロバイオティクスを摂取させたりすることでその治療効果を高めようとする試みが進んでいる。
今回の研究では、乳酸菌OLL1073R-1株の産生するEPSが、免疫チェックポイント阻害薬の効果を高めることができるか研究を実施した。明治保有の乳酸菌OLL1073R-1株は、さまざまな免疫調節活性が報告されている。
CCR6陽性CD8+T細胞増、腸から全身に移動する可能性
研究グループは、まず、EPSの経口摂取によって小腸パイエル板に存在するCCR6陽性CD8+T細胞が増加することを見出し、同細胞が腸から全身に移動する可能性を示した。
EPS単独経口摂取では腫瘍の大きさに変化なし、免疫チェックポイント阻害薬併用で有意に腫瘍が小さくなる
続いて、CCR6と結合するCCL20を産生するがん種を実験に用いた。その結果、EPS単独の経口摂取では腫瘍の大きさに変化はなかったが、免疫チェックポイント阻害薬と併用すると有意に腫瘍が小さくなった。こうした腫瘍を詳細に解析したところ、EPSの経口摂取によってCCR6陽性CD8+T細胞がより多く浸潤しつつ、IFNγを産生していることや、多くの活性型T細胞が浸潤していることがわかった。
さらに、EPSに含まれる特殊なグリセロール3リン酸構造が、こうした機能に関わっていることが示唆された。
免疫細胞増、がんに浸潤して腫瘍組織内環境を免疫反応が働きやすい場に整える
今回の研究では、EPSの経口摂取によってある免疫細胞が小腸で増加し、同細胞ががんに浸潤して腫瘍組織内の環境をあらかじめ免疫反応が働きやすい場に整えることで、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果が適切に発揮されることを示した。
これまでに、腸内細菌やプロバイオティクスが免疫チェックポイント阻害薬の治療効果に影響を与えるメカニズムはほとんどわかっていなかった。今回の研究によって、CCR6陽性CD8+T細胞という腸とがんをリンクする1つが特定されたことで、今後こうした研究や臨床への応用が飛躍的に進む可能性があるという。
研究グループは、EPSのヒトがん患者への応用に向けて、引き続き研究を進めていくとしている。
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・順天堂大学 プレスリリース