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東大ら ビタミンKの肝臓における作用不足は出血と寿命短縮の要因になると報告

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2014年02月21日 PM07:00

不明な点の多いビタミンKの作用解明に一歩

東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 抗加齢医学講座特任教授の井上聡氏、老年病科特任講師の東浩太郎氏(研究当時)、埼玉医科大学ゲノム医学研究センター講師の池田和博氏らの研究グループは、大阪大学、神戸薬科大学との共同研究により、ビタミンKの肝臓での作用不足は出血傾向を高めること、および寿命短縮につながることを突き止めたと発表した。この研究成果は、米国東部時間の2月10日、「PLOS ONE」オンライン版に掲載されている。

ビタミンKに関しては、これまでの疫学研究により、不足すると動脈硬化や認知症、悪性腫瘍のリスクを上げることにつながる可能性があることが指摘されてきた。臨床的には新生児の頭蓋内出血の予防に用いられるほか、臨床試験データから骨粗鬆症治療薬としても活用されている。しかし、その作用については依然不明な点が多く、研究も進んでいなかった。

(この画像はイメージです)

遺伝子改変マウスの作製に成功、同マウスの実験で明らかに

ビタミンKは、主にγグルタミンカルボキシラーゼ(GGCX)と協調して作用し、特定のグルタミン酸にカルボキシル基を付加するタンパク質修飾に関わっているとされる。肝臓で合成される血液凝固因子の第2因子、第7因子、第9因子、第10因子は、このタンパク質修飾であるGla化を受け、活性化する。そのため、ビタミンK不足によるGGCXの作用低下は、血液凝固因子のGla化不足を生み、結果として出血傾向にいたるという。

だが、このGGCXは肝臓のみならず全身に広く分布しているほか、Gla化を受けることが判明しているタンパク質も、血液凝固因子以外に10種類以上が存在し、それらもまた肝臓以外の多くの臓器で発現している。こうしたことからGGCXを介するビタミンKの作用は、全身におけるさまざまな生理的・病理的現象に関係していることが推測され、動物モデルなどによる詳細な解析が待たれていた。

しかし、GGCXを全身で欠損するマウスは、激しい出血傾向を示すことから、胎生期から出生直後にかけて死亡するため、GGCXの多様な作用を生体で明らかにすることは難しく、実現されていなかった。

こうしたなか、同研究グループは、特定の遺伝子を欠損するように操作できるCre-loxPシステムを用い、肝臓のみでGGCXの発現を欠損するマウスの作製に世界で初めて成功した。そして、このマウスを用いることで、ビタミンKの作用不足と凝固因子の活性低下を確認することができたという。

オスの寿命が顕著に短縮など興味深い結果も

また、肝臓のみでGGCXを欠損するマウスでは、正常なマウスに比べ、肝臓におけるビタミンK依存性凝固因子活性の低下がみられ、尻尾から出血する時間の明らかな延長、皮下出血、妊娠時の性器出血、寿命の短縮も確認されたそうだ。

さらに妊娠していないメスに比べると、オスの寿命が顕著に短くなっているという性差も観察され、興味深い結果が示されている。

特定の臓器でGGCXを欠損したマウスの作製は、これまで世界でも例がなく、大きな研究成果であり、今回の方法の応用で、肝臓以外の他の特定の臓器だけでGGCXを欠損するマウスの作製も可能となったという。同研究グループでは、これまで解析が困難であったビタミンKの全身における多様な作用の解明が進むことが期待されるとしている。(紫音 裕)

▼外部リンク

東京大学医学部附属病院/埼玉医科大学ゲノム医学研究センター プレスリリース
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release

Liver-Specific γ-Glutamyl Carboxylase-Deficient Mice Display Bleeding Diathesis and Short Life Span
http://www.plosone.org/article/0088643

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