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広範囲脳梗塞への血管内治療、有効性・安全性を臨床試験で確認-兵庫医大ほか

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2022年02月14日 AM11:15

世界初、血管内治療対象外・広範囲脳梗塞への臨床試験を全国45施設で実施

兵庫医科大学は2月10日、これまで血管内治療の対象ではなかった広範囲脳梗塞の患者に対する世界初の臨床試験を全国45施設で実施し、発症3か月後の自立歩行までの回復率が、血管内治療を行うことで、血管内治療を行わない場合と比較して2.4倍上昇することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大脳神経外科学の吉村紳一主任教授、臨床疫学の森本剛教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「New England Journal of Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

血管内治療は、主幹動脈閉塞による脳梗塞患者に対して、神経学的予後を改善することが可能な治療法であることが証明されており、全国の脳卒中センターで広く実施されている。しかし、現時点における診療ガイドライン上、同治療を推奨されている患者は「発症から6時間以内(条件を満たせば24時間以内)に治療が開始できる」「元々日常の勤めや活動が行える」などの条件に加えて、CTやMRIで梗塞部位が限局していることが条件とされている。一方、脳梗塞範囲が広範囲である場合は、他の条件が満たされていても、出血性合併症の恐れが高いことから、血管内治療は推奨されていない。一般に、広範囲脳梗塞患者の神経学的予後は不良であり、3か月後に自立歩行できる患者はわずか7.5%と、広範囲脳梗塞患者の生活自立度をどのように向上させていくかが重要な課題だ。

そこで、今回の研究では、現時点における診療ガイドライン上、血管内治療の推奨外となっている広範囲脳梗塞患者に対して、標準的な内科的治療に加えて血管内治療を行うことで、内科的治療のみと比較して「3か月後の生活自立度が優れるかどうか」を確かめるための臨床試験を、全国の脳卒中センター45施設の協力を得て実施した。

なお、全国の脳卒中センター45施設は、西湘病院・、広南病院、岩手県立中央病院、災害医療センター、熊本赤十字病院、、八戸市民病院、岐阜大学医学部附属病院、九州医療センター、新潟市民病院、横浜新都市脳神経外科病院、大西脳神経外科病院、国立循環器病研究センター、天理よろづ相談所病院、流山中央病院、名古屋医療センター、弘前大学医学部附属病院、山口大学医学部附属病院、荒木脳神経外科病院、高知赤十字病院、筑波大学附属病院、徳島大学病院、日本医科大学、函館新都市病院、西宮協立脳神経外科病院、川崎幸病院、京都第二赤十字病院、佐賀大学医学部附属病院、昭和大学病院、、中村記念病院、清仁会シミズ病院、尼崎総合医療センター、大阪医療センター、大阪大学医学部附属病院、大曲厚生医療センター、埼玉医科大学国際医療センター、神鋼記念病院、聖マリアンナ医科大学東横病院、土浦協同病院、鳥取大学病院、虎の門病院、長崎医療センター、三重大学医学部附属病院。

対象202人、発症3か月後まで経過観察

今回は、標準的な内科的治療に加えて血管内治療を行う群と、内科的治療のみの群を比較する「ランダム化臨床試験」を実施。2018年11月~2021年9月までの間に、全国45施設を急性期脳梗塞で受診した18歳以上で、元々日常活動が自立している患者を対象に、脳梗塞の範囲が広範であり、発症から6時間(発症時刻が不明で、MRIで脳梗塞が完成されていないと判断される場合は24時間)以内に治療が開始できる場合に、患者もしくは代諾者の承諾を得て、研究に組み入れた。

血管内治療群となった患者には、太ももの血管からカテーテルを挿入し、脳内の詰まっている血管から血栓を除去。血管内治療群も内科的治療のみの群も、治療から3か月間、同じように患者を診療し、3か月後の生活自立度や有害事象を、「割り付けられた治療を知らない医師または理学療法士」が評価した。予定患者数は200例とし、最終登録患者の経過観察は2021年12月20日をもって終了。本研究では、同大脳神経外科学が研究事務局を担当し、臨床疫学大学院生がイベント評価委員、兵庫医科大学同窓会(緑樹会)会長の石蔵礼一が画像評価委員長を務めるなど、同大が中心となって研究を実施した。

最終的に203人が登録され、1人が同意を撤回したため、202人(血管内治療群100人、内科的治療群102人、平均年齢76歳、女性44%)を発症3か月後まで経過観察した。

血管内治療を受けることで、自立歩行まで回復の可能性2.4倍

研究の結果、血管内治療を受けた広範囲脳梗塞患者100人中31人、内科的治療のみを受けた広範囲脳梗塞患者102人中13人が3か月後に自立歩行まで回復。血管内治療を受けることで、回復率は2.4倍になることを世界で初めて実証した。

今回用いたmRS(modified Rankin Scale)は、0点(全く症状がない状態)~6点(死亡)までの生活自立度の評価に使われる。3点は介助なしに歩行ができる状態を示す。血管内治療を受けることでmRSが1段階良くなる可能性が2.4倍になり、また、発症後48時間以内に手が動くようになったり、言葉が話せるようになったりするなどの神経機能の改善も3.5倍になることを示した。

一方で、症状の有無を問わない48時間以内の頭蓋内出血は血管内治療群の58%で認められ、内科的治療群の31%よりも高率に発生していたが、出血により症状が悪化する症候性頭蓋内出血には統計学的な差は認めなかった。その他の有害事象も、血管内治療群で多い傾向にあったが、統計学的な差は認めなかったとしている。

多くの患者の生活自立度改善に期待

今回の研究により、広範囲脳梗塞に対する血管内治療の有効性や安全性が、世界で初めて実証された。研究グループは、今回の成果について、今まで血管内治療の対象に含まれなかった広範囲脳梗塞患者にとって、元の日常生活を取り戻すチャンスをもたらすものであり、画期的な成果だとしている。

今回の研究結果を受けて、今後、世界中の臨床医はより多くの広範囲脳梗塞患者に対して血管内治療を行うことになると考えられ、世界中で多くの患者の生活自立度を改善させることにつながることが期待される、と研究グループは述べている。

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