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新たなてんかん治療戦略として「ADAM22発現量増加」を提案-生理研ほか

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2021年12月16日 AM11:00

てんかん抑制に重要なADAM22・LGI1タンパク質、量と機能の関係は?

生理学研究所は12月15日、マウス脳においてADAM22の量を調節する仕組みを解明し、てんかん発症を抑止するために必要なADAM22の量を明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所の深田正紀教授、深田優子准教授、横井紀彦助教、平林真澄准教授、および京都大学の深井周也教授らが共同で行ったもの。研究成果は、「Cell Reports」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

体の中にはさまざまなタンパク質が存在しており、健康の維持に重要な役割を果たしている。実際に、多くの遺伝性疾患では、重要な働きを担うタンパク質の量や機能がある量を下回ることで、臨床症状が出現する。したがって、タンパク質の量と症状出現との関係を明らかにし、そのタンパク質の量の調節機構を解明することは、疾患治療において極めて重要となる。

これまでに研究グループは、てんかん発症に関連する、膜タンパク質ADAM22と分泌タンパク質LGI1が神経シナプスにおいて複合体を形成していることや、-LGI1複合体の量が減少すると、てんかんの原因となることを報告してきた。

ADAM22<脳内でPKAによりリン酸化<14-3-3と結合<シナプスで機能

今回、研究グループは、ADAM22の量がどのように調節されているかを明らかにするため、ADAM22の合成経路と分解経路を詳細に調べた。その結果、ADAM22が安定化し、その後シナプスで正常に機能するためには、リン酸化酵素PKAによりリン酸化され、14-3-3というタンパク質と強固に結合することが重要であることを見出した。さらに両者の結合様式を原子レベルで明らかにすることに成功した。一方、このリン酸化を受けない遺伝子改変マウス(Adam22S832A)を作製したところ、ADAM22は14-3-3と結合できずに分解されてしまい、脳内のADAM22の量が約40%程度にまで減少することを見出した。

ADAM22は健常マウスの10%、LGI1は50%あればてんかん抑制

次に、どのくらいの量のADAM22があれば脳の過剰興奮が阻止され、てんかん発症を抑制できるかを明らかにするため、ADAM22とLGI1の量が異なる7種類のマウスにおいて、てんかんのおこりやすさを比較。その結果、ADAM22の量が健常マウスの約10%あればてんかん発症を抑えられることが判明した。一方、LGI1の量は健常の30%まで低下すると致死性てんかんが発症し、自発性てんかんを抑止するには50%は必要であることを突き止めた。

さらに、脳内にはさまざまな細胞の種類があるが、てんかん発症を抑えるためには、ADAM22とLGI1は、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞の両方で働く必要があることも明らかとなった。

新たなてんかん治療薬開発に期待

現在使用されている抗てんかん薬の多くは、直接イオンチャネルを標的としている。一方、ADAM22–LGI1はこれまでとは異なるてんかん治療標的になりうると考えられる。このような「タンパク質の量と場所についての情報」は、病気の治療の開始や治療効果の判定に重要な指針を与えるもので、「今後もさまざまな疾患の研究手法として必要とされ、広く治療に活かされる事が望まれる」と、研究グループは述べている。

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