VWFと血小板との相互作用阻害のcaplacizumab、2022年申請予定
サノフィ株式会社は12月13日、開発中のcaplacizumabについて、後天性血栓性血小板減少性紫斑病(以下、後天性TTP)の日本人患者を対象とした第2/3相試験の肯定的な結果を、第63回米国血液学会議(ASH)で発表した。同試験の結果を踏まえ、2022年に当局に承認申請する予定としている。
後天性TTPは、生命が脅かされるまれな自己免疫性血液疾患。止血に関わるタンパク質であるフォン・ヴィレブランド因子(VWF)の特異的切断酵素であるADAMTS13(a disintegrin and metalloproteinase with a thrombospondin type 1 motif, member 13)の活性低下により、血液中に過剰なVWFが蓄積し血小板凝集を引き起こすことが原因だ。一部の患者では、蘇生処置が必要となる場合もあり、短期的な転帰が予測できないこともある。多くの場合、後天性TTPの診断直後の数日間は集中治療室で治療を受ける。現行の治療(血漿交換療法と免疫抑制療法)を受けても死亡する患者は20%に及び、死亡例の大部分は診断後30日以内に死亡している。
caplacizumabは、VWFを標的とする薬剤で、VWFと血小板との相互作用を阻害。また、caplacizumabは抗VWFナノボディ(R)で、サノフィが欧米で承認を取得したナノボディ(R)ベースの薬剤としては初の製品となる(欧米での製品名:Cablivi(R))。このナノボディは、特許で保護された新たなクラスの治療用タンパク質で、単一ドメイン抗体のフラグメントで構成され、自然界に存在する重鎖のみで構成される抗体を応用したモダリティとなる。
血漿交換療法と免疫抑制薬にcaplacizumab併用、再発率低く、血小板数や臓器障害マーカー正常化
今回発表された試験は、年齢18歳以上で、血漿交換療法の実施回数が1回以下の後天性TTPと臨床診断された日本人患者21人が組み入れられた単群非盲検試験。caplacizumabは、血漿交換療法と免疫抑制療法併用下での投与後、血漿交換療法の終了後も30日にわたり投与され、その後もなおADAMTS13の抑制が持続する場合は、試験責任医師の判断により最長で8週間の治療期間延長が認められた。
なお、主要評価項目は、per-protocol(PP)集団における試験期間中に後天性TTPを再発した患者の割合とし、再発率20%以下を成功基準。6人が試験を中止し(有害事象による中止2人、医師の判断による中止4人)、15人をPP集団に含めたが、このうち1人(7%)で再発が見られた。血小板数の改善がみられるまでの期間の中央値(95%信頼区間[CI])は、PP集団で2.79(1.76–3.59)日だった。
最も高頻度でみられた有害事象は、便秘(43%)と不眠(29%)。血栓塞栓性事象は2件報告され、内訳は脳梗塞が1例、深部静脈血栓症が1例だった。治療に関連して認められた重篤な出血性有害事象としては、肺胞出血が1例で認められた。試験期間中(治療期間および追跡期間)にわたり、死亡例の発生はなかった。
結論として、日本人後天性TTP患者に対して血漿交換療法と免疫抑制薬にcaplacizumabを併用したところ、再発率は低く、血小板数や臓器障害マーカーの正常化が速やかに認められたとしている。caplacizumabの忍容性は良好で、日本人患者特有の新たな安全性シグナルは認められなかった。
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・サノフィ株式会社 プレスリリース