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1日コップ1杯程度の牛乳摂取、日本人女性で脳梗塞予防効果の可能性-岩手医科大

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2021年12月13日 AM11:15

牛乳摂取量「少」/脳卒中発症「多」の日本人集団で、牛乳摂取・脳卒中発症リスク関連を明らかに

岩手医科大学は12月8日、岩手県北地域コホート研究の10年間の追跡データを用いて、牛乳摂取頻度と脳卒中発症リスクとの関連を解析し、牛乳摂取による脳梗塞予防効果を明らかにしたと発表した。この研究は、同大衛生学公衆衛生学講座の丹野高三特任教授、岩手県北地域コホート研究グループ(研究事務局:岩手医科大学衛生学公衆衛生学講座)の研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。


画像はリリースより

・乳製品は洋食の主要な構成要素であり、欧米人の牛乳摂取による健康影響については数多く報告されている。一方、日本人の牛乳摂取習慣は、第二次世界大戦後、学校給食への導入を機に全国に広まった比較的新しい食習慣であり、現在もなお、日本人成人の牛乳摂取量は欧米人と比べて、とても少ない状況だ。また、日本人と欧米人の疾患構造を見ると、欧米人では心筋梗塞リスクが高いのに比べて、日本人では脳卒中リスクが高いことが知られている。

これまで日本人を対象とした研究において、脳卒中が原因で死亡するリスクに牛乳摂取が及ぼす影響については報告されているが、脳卒中発症に及ぼす影響については報告されていない。そこで、牛乳の摂取量が少なく、脳卒中の発症が多い日本人集団で、牛乳摂取と脳卒中発症リスクとの関連を明らかにするために、岩手県北地域コホート研究の10年間の追跡データを用いて解析した。

女性では牛乳摂取頻度が週2杯未満より、週7杯以上12杯未満で47%リスク低下

今回の研究では、岩手県北地域コホート研究に参加した1万4,111人を対象に、食物摂取頻度調査法を用いて、コップ1杯の牛乳を飲む頻度を調査。回答結果に基づいて、研究参加者を「週2杯未満」、「週2杯以上7杯未満」、「週7杯以上12杯未満」および「週12杯以上」の4グループに分類。脳卒中発症は、岩手県地域脳卒中登録事業のデータと研究参加者のデータを照合することで確認した。牛乳摂取頻度と脳卒中発症リスクとの関連を明らかにするために、牛乳摂取頻度が週2杯未満のグループにおける脳卒中発症リスクを1とした場合の、週2杯以上7杯未満、週7杯以上12杯未満および、週12杯以上の各グループの脳卒中発症リスクを計算した。

その結果、脳梗塞発症リスクについて、女性では牛乳摂取頻度が週2杯未満のグループに比べて、週7杯以上12杯未満のグループで47%のリスク低下が見られた。一方、男性では統計学的に有意なリスクの減少は見られなかった。

男性は、牛乳摂取以外の脳卒中危険因子が多く、影響を見出しにくかった可能性

牛乳摂取が脳梗塞発症リスクを低下させる理由として、研究グループは2つ挙げている。まず、「牛乳を飲む人の健康的な生活習慣・食習慣による影響」だ。今回の研究でも、牛乳を飲む人では牛乳を飲まない人(週2杯未満)に比べて、タバコを吸う人や大量飲酒する人が少なく、習慣的に運動している人、魚・大豆タンパクや野菜・果実を多く摂る人が多い傾向が見られた。喫煙や大量飲酒は脳卒中の危険因子であり、、魚・大豆タンパクや野菜・果実摂取は脳卒中の予防因子だ。牛乳を1日1杯飲む人の健康的な生活習慣・食習慣が脳卒中発症リスク低下に影響した可能性が考えられるという。

次に、「牛乳に多く含まれる栄養素による降圧作用等の影響」だ。牛乳に多く含まれるミネラル(カリウム、)は血圧を下げる効果があることが知られている。同研究に参加した人も、牛乳を飲む人では牛乳を飲まない人(週2杯未満)に比べて、血圧が低い傾向が見られた。高血圧は脳卒中の最大の危険因子だ。牛乳に含まれるミネラルによって血圧上昇が抑制され、脳卒中の発症リスクが低下した可能性が考えられるとしている。

一方、男性で明確な関連が見られなかった。これは、男性では女性に比べて、牛乳摂取以外の脳卒中の危険因子(喫煙や大量飲酒)を持っている人が多かったため、牛乳摂取による脳卒中発症への影響を見出しにくかった可能性があるという。男性の牛乳摂取と脳卒中発症リスクとの関連を明らかにするためには、さらなる研究が必要と考えられる。

また、同研究の限界として、食物摂取頻度調査票では牛乳摂取量を定量的に見積もることができなかったことが挙げられる。牛乳の至適摂取量を明らかにするためにはさらなる研究が必要だが、コップ1杯は通常150~200mlであるので、それを目安と考えるのがよいとしている。

牛乳の至適摂取量、男性での牛乳摂取・脳卒中発症の関連はさらなる研究を

日本は、欧米に比べて牛乳摂取量がいまだに少なく、また欧米とは疾病構造が異なる。欧米人を対象とした牛乳摂取と脳卒中発症リスクに関するエビデンスが、日本人にそのまま当てはまるかどうかは明らかでない。

同研究の結果から、日本人女性では「牛乳を週7杯以上12杯未満」(1日当たり1杯程度)飲むことに、脳梗塞の発症予防効果がある可能性を示した。一方、牛乳の至適摂取量や男性における牛乳摂取と脳卒中発症との関連についてはさらなる研究が必要だ、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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