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心不全患者の介護発生率は100人年あたり10.7人、一般人口より高値-新潟大

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2021年11月24日 AM11:30

心不全患者が介護保険を必要とする頻度は?

新潟大学は11月22日、高齢心不全患者を対象に行った調査において、心不全患者における介護発生率(=新規介護保険申請率)が一般人口に比べ極めて高く、患者に内在する諸問題が介護発生率増加に寄与していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科循環器内科学分野の藤木伸也専任助教、猪又孝元教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Circulation Journal」に掲載されている。


画像はリリースより

高齢化がすすむ日本では、65歳以上の人口は全体の28%を超え、老化に関連した疾患が増加している。循環器分野においては、心不全が該当する。同大循環器内科学分野では、「心不全パンデミック」と呼ばれる心不全患者の増加をいち早く予測し、今まさに予測通りの展開を迎えている。心不全は、5年死亡率が50%以上の極めて予後不良な疾患であり、日本において、がんに次ぐ死因となっている。

そんな中、2020年秋に「循環器病対策推進基本計画」が、「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」に基づき閣議決定された。これは循環器病対策の基本的方向を示しており、今後の都道府県循環器病対策推進計画の基本となる。関連文書に「循環器病は、我が国における主要な死亡原因であり、介護が必要となる主な原因の一つである」と明記されており、死亡ばかりではなく介護の発生を抑えることが重要な課題である。

介護保険は2000年に制定された社会保障制度の一つであり、介護を必要とする高齢者を社会全体で支え合う仕組みとして、20年以上に渡り広く国民に利用されている。その一方、利用者数や給付額は20年で約2.5倍となり、社会的・経済的負担の増大が懸念されている。さらに介護保険の利用は心不全患者の予後を規定するリスク因子であり、生活機能障害を表す重要な指標といえる。しかしこれまで、どのような心不全患者がどのような頻度で介護保険を必要とするのか不明なままだった。

新潟市内の65歳以上の心不全患者、EF50%以下を解析

研究グループは、2011年1月〜2016年12月に、新潟市内の総合病院7施設(新潟大学医歯学総合病院、新潟市民病院、新潟県立がんセンター新潟病院、新潟南病院、新潟万代病院、桑名病院、聖園病院)で心臓エコー検査(以下、心エコー)を行い、(以下、EF)が50%以下と診断された人のうち、65歳以上の高齢心不全患者を対象とした。各施設の保管してある該当時期の心エコー記録をすべて確認し、EF50%以下である患者を抽出。心エコー実施日を登録日とし、診療録を用いて年齢、基礎心疾患、併存疾患、既往症、治療、関連する検査結果について確認した。登録日から2017年1月までに主治医意見書が新規に作成された場合を、「介護発生」と定義して介護発生率を計算した(介護発生率=新規介護保険申請率)。

また、一般人口おける介護発生率を計算し比較するために、新潟市役所に保管されてある個人情報を含まないデータを利用した。心不全患者の登録と同時期の、新潟市内在住の65歳以上の地域在住高齢者の介護保険のデータを抽出し解析を行った。

期間中に心エコーでEF50%以下と記録された心不全患者3,550例のうち、65歳以上でかつ介護保険未申請の1,852例を解析対象とした。平均年齢は75.8歳、男性が71.2%、EFの中央値は43.0(35.7-47.0)%で、基礎心疾患は虚血性心疾患が約半数だった。

併存疾患、睡眠薬などの薬剤使用が介護発生リスク因子

心不全患者では、総観察期間3,116人年、平均観察期間1.7年において、新規介護保険申請が332人にみられ、介護発生率は100人年あたり10.7人。これは地域在住高齢者にくらべ有意に高値であった(HR、1.47;95%CI、1.32‒1.64;P<0.001)。

多変量解析では、心房細動(HR、1.588;95%CI、1.279‒1.971)、脳卒中の既往(HR、2.02;95%CI、1.583‒2.576)、(HR、1.738;95%CI、1.253‒2.41)、認知症(HR、2.804;95%CI、2.075‒3.789)などの併存疾患や、睡眠薬(HR、1.461;95%CI、1.148‒1.859)、利尿薬(HR、1.417;95%CI、1.132‒1.773)などの薬剤の使用が、介護発生のリスク因子として抽出された。

心不全が社会的・経済的な負担を増長するリスクになるという新たな課題

日本が抱える介護という社会的・経済的な負担を増長するリスクとしての、心不全の新たな側面が初めて明らかとなった。同大は「予防医学を基盤とした健全な医療」を目指している。疾患に陥らないための予防対策(一次予防:生活習慣病などの治療)、罹患したのち死亡や再入院を減らすための予防対策(二次予防:手術や薬物治療)とともに、介護予防は重要であり、特に心臓病患者において大きな問題になりうることが判明した。「リスクを正確に把握し、通常治療からその後のリハビリテーションに至るまで、網羅的かつ全人的な医療を提供できる体制を整え、健康寿命の延伸につなげたい」と、研究グループは述べている。

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