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ビタミンB2がミトコンドリアを活性化して細胞老化を抑制すると判明-神戸大

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2021年11月08日 AM11:15

ビタミンB2が細胞老化に与える影響は?

神戸大学は11月2日、老化ストレスを受けた細胞にビタミンB2を添加するとミトコンドリアのエネルギー産生機能が増強され、老化状態に至るのを防止する効果があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大バイオシグナル総合研究センターの長野太輝助手、鎌田真司教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Molecular Biology of the Cell」に掲載されている。


画像はリリースより

超高齢社会を迎えた日本では医療・福祉問題の解決に向け、健康で長生きするための老化研究の重要性が高まっている。体が老化する仕組みは完全にはわかっていないが、体を作っている細胞の老化が一因であることが明らかになっている。細胞は分裂を繰り返すたびに染色体の末端部にあるテロメアという部分が短くなっていき、ある一定を超えると「細胞老化」という分裂不能な状態に陥る。さらに、その後の研究でテロメアが短くなる以外にも、DNAの損傷や活性酸素の発生など、さまざまなストレスが原因で細胞が老化状態になることが判明しており、ストレスにより発生した老化細胞は加齢に伴って体内に蓄積していくと考えられている。ここ10年ほどの老化研究から、老化細胞は全身の臓器の機能低下を引き起こす有害な作用を持ち、老化細胞の蓄積を防ぐことでがんや心血管疾患、アルツハイマー病、糖尿病などの加齢により発症しやすくなる加齢性疾患の改善や予防ができることがわかってきている。老化細胞の蓄積を抑えて健康寿命を伸ばす医薬品の開発は世界中で熾烈を極めているが、副作用などの問題からまだ実用化された薬はない。

一方、ビタミンは人体の機能を正常に保つために必要な微量栄養素であり、体内で合成できないため、食物などから摂取する必要がある。中でもビタミンB2(リボフラビンとも呼ばれる)は、肉類や卵、乳製品に多く含まれ、体内でのエネルギー産生や代謝に重要なビタミンだ。欠乏すると口内炎や貧血などの症状が出るが、反対に、過剰摂取してもすぐに排出されるため悪影響はない。しかし、ビタミンB2は健康維持に必須な栄養素でありながら、老化との関連は研究されていなかった。日常的に摂取している栄養素で細胞老化を制御できれば、低コストで安全な抗加齢薬の実現が期待されることから、研究グループは、ビタミンB2が細胞老化に与える影響を研究した。

細胞内に取り込まれたビタミンB2はFADに変換され、老化抑制に働いていることが判明

研究グループは、ヒト細胞にDNAを傷つける薬剤で老化状態を誘導するストレスを与えてもすぐには老化せず、SLC52A1というビタミンB2を細胞内に取り込むタンパク質(ビタミンB2トランスポーター)の産生量を増やすことで、細胞老化に抵抗性を示すという現象を発見した。そこで、細胞に老化ストレスを与えた後に培養液のビタミンB2含有量を増やす実験を行ったところ、培養液中のビタミンB2の量に応じて老化への抵抗性が強くなった。ビタミンB2は、細胞内でフラビンアデニンジヌクレオチド()という物質に変換され、エネルギー産生など生命活動に必要な化学反応を促進する補酵素として働く。実際に、老化ストレスを受けた細胞ではFADの存在量が増えたことから、細胞内に取り込まれたビタミンB2はFADに変換されて老化抑制に働いていることがわかった。

ビタミンB2はエネルギー産生に働くミトコンドリアを活性化し、細胞老化を抑制

次に研究グループは、FADが細胞老化を抑制する仕組みを調べるためミトコンドリアに注目した。ミトコンドリアは機能低下により細胞を老化させることや、FADがミトコンドリアでのエネルギー産生に重要なタンパク質である呼吸鎖複合体Ⅱの補酵素として働くことが知られている。老化ストレスを与えた際のミトコンドリアの働きを調べた結果、老化ストレスを受けた細胞は一時的にミトコンドリアの活性を高め、その後活性が低下すると老化状態に陥ることを見出した。さらに、培養液中のビタミンB2含有量を増やすと老化ストレスを受けてから時間が経ってもミトコンドリア活性が高い状態が維持され、老化抵抗性も高い状態が持続することが明らかとなった。

最後に、ミトコンドリアの活性化がどのような仕組みで老化抵抗性につながるのかを明らかにするため、細胞内のエネルギー不足を検知して働くAMPKという酵素の活性を調べたところ、ミトコンドリアの活性化によりAMPK活性が抑えられることがわかった。反対に、ミトコンドリアの働きを薬剤で抑えるとエネルギー不足を検知したAMPKが活性化し、細胞老化を誘導するp53タンパク質に細胞分裂を止めるように指令を出すことで老化状態に至ることがわかった。以上の結果から、ビタミンB2は老化ストレスを受けた細胞のミトコンドリア活性を高め、AMPKやp53の働きを抑えることで老化状態に陥るのを防いでいることが明らかになった。

ビタミンB2による細胞老化抑制効果の応用で、簡便・安全な加齢性疾患治療法開発の可能性

ビタミンB2は食事やサプリメントにより容易に摂取することができ、過剰摂取しても速やかに体外に排出されるため、今回の研究で明らかになったビタミンB2による細胞の老化抑制効果を応用すれば、簡便かつ安全な加齢性疾患の治療薬として発展させられることが期待される。「今後は治療薬の実用化に向け、動物実験でビタミンB2の抗老化効果を検証する研究を進めていく」と、研究グループは述べている。

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