寝屋川市の国民健康保険と後期高齢者医療制度の加入者6万9,147人対象に透析のリスク評価
大阪大学は10月26日、健診や医療機関で腎臓の検査を受けていない高齢男性は、透析のリスクが高いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大キャンパスライフ健康支援センターの芦村龍一特任助教と山本陵平准教授ら、大阪府寝屋川市の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
画像はリリースより
透析治療が必要な末期腎不全を予防する上で、腎臓病の早期発見が重要だ。健診は、生活習慣病に加えて腎臓病の早期発見の役割を担っているが、特定健診と後期高齢者健診の受診率はそれぞれ50%、30%と低いことが知られている。これまで、健診を受けていない人は死亡のリスクが高いことが知られていたが、透析治療を必要とする末期腎不全への影響は報告されていなかった。
今回、研究グループでは、寝屋川市の国民健康保険と後期高齢者医療制度の加入者6万9,147人を、2012年度の健診受診の有無と医療機関での腎臓の検査(尿定性検査と血清クレアチニン検査)の有無に基づいて、「健診あり」「健診なし・腎臓の検査なし」「健診なし・腎臓の検査あり」の3群に分類し、透析のリスクを評価した。
75歳以上の高齢男性、「健診あり」より「健診・腎臓検査なし」の透析リスク2.72倍
傾向スコアマッチング法を用いて健診ありと健診なし・腎臓の検査なしの2群の対象者の特徴(年齢など)をそろえて解析を行った結果、男性では、健診あり(5,332人)のうち11人(0.2%)が透析を発症し、健診なし・腎臓の検査なし(5,332人)のうち24人(0.5%)が透析を発症。女性では、健診あり(7,573人)のうち6人(0.1%)が透析を発症し、健診なし・腎臓の検査なし(7,573人)のうち9人(0.1%)が透析を発症した。
多変量解析の結果、男性では、健診あり(9,474人)と比較して、健診なし・腎臓の検査なし(9,833人)の透析のリスクは1.66倍に上昇。特に、75歳以上の高齢男性では、健診あり(2,951人)と比較して、健診なし・腎臓の検査なし(1,412人)の透析のリスクは2.72倍に著しく上昇していた。
女性では、健診あり(1万4,145人)と比較して、健診なし・腎臓の検査なし(1万311人)の透析のリスクは1.51倍に上昇していた。男性と異なり、75歳以上の高齢女性では、健診あり(4,265人)と比較して、健診なし・腎臓の検査なし(2,809人)の透析のリスクは0.84倍でリスクの上昇は認めなかったという。
女性は透析発症数が少ないため、より大規模な研究で評価の必要
今回の研究により、過去1年間に健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていなかった75歳以上の高齢男性は、透析のリスクが高いことを報告した。なお、女性については、透析の発症数が少なかったため(2017年度末までの透析発症者数:男性246人、女性124人)、より大規模な研究で評価をする必要がある。
本研究成果により、健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていない高齢男性は、透析のリスクが高く、末期腎不全の予防のために、健診の受診勧奨の重点対象候補となることが期待される、と研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU