欧州等では「NexoBrid」として使用中、日本では2021年6月に承認申請
科研製薬株式会社は10月21日、熱傷焼痂除去剤「KMW-1」について、日本人熱傷患者を対象とした国内第3相臨床試験の結果を第47回日本熱傷学会総会・学術集会で報告したことを発表した。
KMW-1は、パイナップル(Ananas comosus)の茎から抽出されるタンパク質分解酵素の混合物を有効成分とする化学的壊死組織除去剤。同剤を熱傷創へ受傷後早期に塗布することで、正常組織を傷害せずに焼痂を選択的に除去することが期待される。欧州等では「NexoBrid(R)」の名称ですでに熱傷治療に使用されている。日本では2021年2月に希少疾病用医薬品に指定され、2021年6月に同社が熱傷焼痂除去の外用剤として製造販売承認申請を行った。
熱傷部位では焼痂と呼ばれる壊死組織が生じる。重症熱傷の治療にあたっては、できるだけ早期に焼痂を除去することが臨床的に重要な第一歩と考えられており、現在の標準的治療では、外科的に焼痂を除去している。
壊死組織が完全除去された被験者の割合88.6%
同試験は、熱傷面積が全体表面積(TBSA:Total Body Surface Area)の3~30%の深達性II度またはIII度熱傷を有する日本人の入院患者35例(小児を含む)を対象とした、多施設共同、非対照、非盲検試験。1回当たりの最大塗布面積を15%TBSAとして、同剤を受傷後84時間以内に熱傷創へ塗布し、4時間後に除去した際の有効性を確認及び安全性を検討した。
その結果、主要評価項目の「壊死組織が完全除去された被験者の割合」は88.6%(35例中31例、95%信頼区間:74.05~95.46)であり、有効性が示された。
副次的評価項目については、「壊死組織除去面積割合」の平均値が96.2%、「壊死組織が完全除去されるまでの期間」の中央値(Kaplan-Meier法)は、登録時点から1.0日、受傷時点から3.0日。「壊死組織除去完了までに外科的デブリードマン(壊死組織除去)を実施した被験者の割合」は5.7%(35例中2例)、「壊死組織除去完了までに外科的デブリードマンを実施した面積割合」の平均値は3.7%だった。「自家移植を実施した被験者の割合」は68.6%(35例中24例)、「自家移植を実施した面積割合」の平均値は59.5%だったとしている。
創閉鎖後3か月までの副作用発現頻度は20.0%(35例中7例)であり、適用部位疼痛11.4%(35例中4例)、貧血、発熱、血中クレアチンキナーゼ増加は各2.9%(35例中各1例)だった。同剤の使用による疼痛は、適切な疼痛管理にて抑制することができたとし、重篤な副作用は認められなかったとしている。
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・科研製薬株式会社 プレスリリース