より高い安全性の確保、高圧蒸気滅菌器での滅菌が可能に
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は10月13日、神経筋疾患対象の呼吸理学療法機器LIC TRAINER(R)(特許出願、商標登録済)の新規機器「LIC TRAINER 2」の開発が終了し、2021年10月1日に提供を開始したと発表した。この研究は、同センター、同病院身体リハビリテーションの水野勝広部長、寄本恵輔理学療法主任らの研究グループによるもの。研究成果は、「Progress in Rehabilitation Medicine」に掲載されている。
画像はリリースより
神経筋疾患の多くは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだん痩せて力がなくなり、さらに呼吸筋力が低下することで肺活量や咳の力が低下する。そのため呼吸理学療法が重要になるが、十分に肺を膨らませる方法は難しく、胸郭の柔軟性を維持することは困難であり、胸郭の柔軟性を評価することさえできなかった。
LIC TRAINERは、NCNPが、従来研究機関で使用されていたLIC機器を幅広く臨床で利用ができるように独自に改良。加圧時にリークしないよう高密閉性を付加したこと、高圧がかった圧を解除する安全弁を装備し、安全性を確保したこと、神経筋疾患患者が自分で自発呼気弁をリークすることを可能にしたこと、などの新たな機能を付加した。2016年に同センタートランスレーション・メディカルセンターの協力により、同院で開発・提供した。
一方、LIC TRAINERでは、安全弁の圧調整や感染対策という点でさらなる改良の余地を感じていたという。そこで、今回、より便利で性能を向上させた新規機器「LIC TRAINER 2」を開発。LIC TRAINER 2は、可変式安全弁の装備にてより高い安全性を得たこと、本機器の消毒は滅菌(高圧蒸気滅菌器での滅菌)が可能となり、高い感染対策を得るなど新たな機能を付加した。
今までは難しいとされていた深吸気を得る呼吸理学療法に取り組める
同センターは、2012年よりLIC機器の開発研究を行い、米国のBachらが報告した1方向弁を使用したLICに注目し、1方向弁を使用すると、喉の筋を意識して息溜め(air stack)ができなくても、また、気管切開をしていても、深吸気が得られることを確認した。しかし、LICを搭載した機器は国内外含めて販売されていなかったため、研究グループが試行錯誤した試作品を元に、カーターテクノロジーズ株式会社と共同開発を進めた。
試作品を作るにあたって、特に、高い気密性、一定圧で解放される安全弁、患者側が意図的に操作できるリーク弁の、3つの要素を取り入れることで、圧外傷の危険を減らし、かつ患者が主体的に呼吸理学療法に取り組めることを狙いとした。これらの結果より、試作品であったLIC機器はLIC TRAINERとして製品化。LIC TRAINERを用いることで、喉の筋力低下があっても、気管切開されていても、深吸気が得られない患者であっても、LIC TRAINERであれば今までは難しいとされていた深吸気を得る呼吸理学療法に取り組めることができるようになる。
カーターテクノロジーズが共同開発、株式会社星医療酸器が販売
製造は、試作段階から当センターとLIC TRAINER関連技術の共同出願を行っているカーターテクノロジーズが共同開発を行い、販売は株式会社星医療酸器が行なっているとしている。
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