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口腔がん、CAF分泌のTGF-βが悪性度と強く関連-新潟大

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2021年10月08日 AM11:30

CAFとがん細胞はどのように影響し合っているのか?

新潟大学は10月7日、口腔がんの進展にはがん関連線維芽細胞()の存在が重要であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科の羽賀健太歯科医師、同研究科口腔病理学分野の山崎学講師、田沼順一教授ら、同研究科生体組織再生工学分野の泉健次教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Translational Oncology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

口腔は、摂食、嚥下、発音といった機能を有することから、ヒトにとって重要な器官の1つ。そのため、口腔がん術後経過は患者の尊厳やQOLを大きく左右する。

先行研究により、研究グループは、手術で切除された組織を調査し、がん細胞のSOX9発現と予後不良が関連し、SOX9が口腔がん悪性度の指標となり得ることを報告している。また、近年、さまざまながんにおいて、がん細胞周囲の微小環境を構成するCAFが、がんの悪性度を左右していることが明らかになってきた。しかし、CAFとがん細胞がどのようにお互いに影響し合っているのかについては、未解明な部分がある。

TGF-β選択的阻害剤同時投与で腫瘍形成を抑制、マウスで

まず、研究グループは、CAFと口腔がん細胞から成る3Dインビトロモデル作製に成功。正常口腔粘膜線維芽細胞(NOF)と比較して、このモデルではがん細胞の悪性度を示す深部への浸潤/遊走が増し、がん細胞内のSOX9発現が高いことがわかった。

この実験モデルにより、CAFが分泌するTGF-βが、がん細胞のSOX9発現や細胞の浸潤/遊走能の亢進に深く関わっていることが判明。CAFが分泌するTGF-βが、がん化していく上皮間葉転換を誘導していることが示唆された。

さらに、3Dインビトロモデルの結果を個体レベルで検証するため、口腔がん細胞とCAFまたはNOFを混ぜ合わせて免疫不全マウスに皮下移植して検討。その結果、CAFの共移植群では、NOFの群より2倍サイズの腫瘍形成があったが、TGF-βに選択的に働く阻害剤を同時に添加することで、腫瘍形成作用が抑制されることがわかった。

また、手術で切除されたヒトがん組織を解析。SOX9陽性細胞が多く認められた口腔がん組織の間質にはCAFの存在割合が高いこと、かつ、CAFが多く認められた口腔がん患者では再発率が高いという関連性を見出した。

CAF分泌のTGF-βでSOX9転写因子発現が亢進、がん細胞に上皮間葉転換が誘導、口腔がん細胞の悪性度「増」

今回の研究により、がん間質に存在するCAFが分泌する増殖因子TGF-βにより、口腔がん細胞でSOX9転写因子発現が亢進し、がん細胞に上皮間葉転換が誘導され、口腔がん細胞の悪性度(浸潤、遊走能)が増すことが示された。このことは、以前報告したSOX9陽性細胞と患者予後の関連にTGF-β/SOX9軸が作用していることの実証につながった。

がんの悪性化を制御するCAFとその細胞が分泌するTGF-βを標的とすることで、がん組織周囲の微小環境も、新たにがん治療のターゲットとして加えることができることになり、がん細胞を標的とした抗がん剤との併用による新規治療法開発への応用が期待できる、と研究グループは述べている。

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