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AIによる筋病理標本判読アルゴリズムを開発、正解率96.9%達成-NCNPほか

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2021年10月05日 AM11:30

基本的な顕微鏡と画像取り込み装置で撮影可能な顕微鏡画像による診断支援技術開発を目指す

)は10月4日、人工知能()を利用した筋病理標本判読アルゴリズムを世界で初めて開発したと発表した。この研究は、NCNP神経研究所疾病研究第一部の大久保真理子研究員、西野一三部長ら、京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センターの松田文彦教授、日本IBMの壁谷佳典データサイエンティスト、高野敦司パートナー(執筆当時)の研究グループによるもの。研究成果は、「Laboratory Investigation」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

筋疾患の診断には、患者から採取した骨格筋組織に対して各種の染色を行った標本を判読する筋病理診断が極めて重要な役割を果たしている。しかし、高い専門性が要求される筋病理診断医の数は、世界的にみても限られている。特に、医師全体の数が限られる発展途上地域では、筋疾患のような希少疾患を専門とする医師を育成する余裕がないことも珍しくない。

一方、近年は深層学習を用いた画像認識技術を病理画像に適用する研究が盛んとなり、AIの活用分野の一つとして注目されている。しかし、希少疾患である筋疾患を対象とした研究は少なく、今回のように筋病理診断を直接支援するモデルの開発は行われていなかった。また、これまでの病理画像AI研究の大多数は、病理標本スライド全体の画像を取り込んだホールスライド画像の使用を前提としているものが多く、高価なホールスライドスキャナーの全世界での低い普及率を鑑みると実用化には高いハードルがあると言わざるを得ない。

そこで、今回の研究では、基本的な顕微鏡と画像取り込み装置があれば撮影可能な顕微鏡画像を用いた診断支援技術開発を目指した。

封入体筋炎・遺伝性筋疾患・神経原性疾患、全1,400検体のヘマトキシリン・エオジン染色標本で

まず、筋炎とそれ以外の疾患(遺伝性筋疾患、神経原性疾患)を分類し、その後、筋炎と遺伝性筋疾患をそれぞれ細分類化。検体はNCNPの筋レポジトリーから、筋病理、自己抗体、遺伝学的解析により確定診断された例を用いた。筋炎群には、封入体筋炎、免疫介在性壊死性ミオパチー、、抗合成酵素症候群を含んだ。一方、遺伝性筋疾患には比較的患者数の多い疾患としてジストロフィノパチー、肢帯型筋ジストロフィー、福山型筋ジストロフィー、Ⅵ型コラーゲン関連ミオパチー、GNEミオパチー、先天性ミオパチーに神経原性疾患を加え、全1,400検体のヘマトキシリン・エオジン染色標本を用いた。

筋炎グループ、遺伝性筋疾患グループの両グループの検体から評価用にランダムに合計96検体をサンプリングし、残りを訓練用とした。画像は、顕微鏡を介したCCDカメラで検体を撮影することで作製。訓練用検体から撮影された画像を用いて筋炎判別モデルの訓練を行った。

専門医に匹敵する判別精度、実診断での利用実現性を示唆

評価用検体から撮影された画像を用いて行い、結果としてAUC 0.996の判別精度、正解率でいうと96.9%を達成。また、比較のため筋疾患専門医9人が評価用検体を診断したところ、専門医の診断結果で最も高い正解率は93.8%となった。これにより、モデルは専門医に匹敵する判別が可能であることが明らかとなり、実診断での利用の実現性を示唆している。

続いて、追加実験として、筋炎4種の分類および遺伝性筋疾患7種の分類を実施。筋炎の分類において、可視化技術を用いてAIが診断時に注目している領域を評価したところ、AIが専門医と近い箇所を判断に利用している可能性が示唆された。

今後、複数施設の検体を利用しての訓練・評価実施が求められる

今回の研究成果で、AIを使った筋病理の診断支援の可能性を確認することができた。しかし、同研究は1施設から取得した検体のみを利用した研究であり、今後、複数施設の検体を利用しての訓練・評価を行うことが求められる。

また、同研究ではヘマトキシリン・エオジンで染色された病理検体のみを用いており、今後は他染色(ゴモリ・トリクローム変法、NADH染色等)の画像を用いた診断支援モデルの構築も期待される、と研究グループは述べている。

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