被災した高校生への心理的支援は有効かつCOVID-19下の子どもに応用可能か?
東北大学は9月13日、2011年の東日本大震災後に高校生に対して行われた心理的介入を紹介し、スクールカウンセラーや高校教諭などの学校の持つ資源を活用することで、高校生の心理状態の改善が図られることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大病院・肢体不自由リハビリテーション学分野の奧山純子助教、宮城県立精神医療センターの舩越俊一副院長、東北大学災害科学国際研究所の門廻充侍助教ら、指定国立大災害科学世界トップレベル研究拠点、の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Disaster Research」に掲載されている。
画像はリリースより
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下において、多くの思春期の子どもに心理的影響が出ている。しかし、そのような思春期の子どもに対して心理的支援をどのように行うべきかについては、対象者が今までにない大人数になる可能性もあり、わかっていない。
今回、研究グループは、東日本大震災後の高校生に対し、スクールカウンセラーや高校教諭などの高校の持つ資源を用いて心理的支援を行った事例を報告し、COVID-19の影響を受けた思春期の子どもに対する心理的状態に応用できる可能性を示唆した。
事前に児童思春期精神科医が研修でカウンセリング法を指導
東日本大震災後1年目、2年目、3年目に、宮城県南の高校生に対し心理調査を実施。心理調査では、抑うつ症状、不安症状、心的外傷後ストレス反応を調べ、各評価指標に定められている基準点に基づいて、一定以上に各問題を有している者(心理的ハイリスク者)かどうかも判定した。心理的ハイリスク者の割合は、東日本大震災後1年目、2年目、3年目を通じて約6割。心理的ハイリスク者全てに対し、スクールカウンセラーや高校教諭がカウンセリングを行った。
心理調査を行う前に各高校のスクールカウンセラーや高校教諭に対して、事前に宮城県立精神医療センターの児童思春期精神科医が研修を行ってカウンセリング法を指導し、高校でのカウンセリング期間もアドバイザーとして支援を実施した。
心理的支援は「効果あり」、COVID-19下の思春期の子どもにも有用である可能性
その結果、心理的ハイリスク者に対してカウンセリングが行われた後の各クラスの心理検査値はほとんど同じになり、高校教諭の専門や教員年数などに関係なく心理的支援に効果があったことが明らかになった。
現在においても、COVID-19流行の影響で、多くの思春期の子どもの心理状態の悪化や不安が報告されている。東日本大震災後に行われた高校の資源を生かした心理的支援は、現在の思春期の子どもへの心理的支援に有用ではないかと考えられる、としている。
同研究により、東日本大震災に被災した高校生に対して高校の資源を活用した心理的支援の導入が心理状態の改善につながったことが明らかになった。このことから、今後、同じ方法をCOVID-19流行のためストレスを受けた思春期の心理状態改善の介入に応用できると考える、と研究グループは述べている。
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・東北大学 プレスリリース