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肺炎球菌へのCAM作用機序を解明、耐性菌回避の治療開発に期待-新潟大ほか

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2021年09月14日 AM11:15

マクロライド系抗菌薬が効かない肺炎球菌が市中で流布

新潟大学は9月10日、マクロライド系抗菌薬であるクラリスロマイシンが肺炎球菌の毒素放出を抑制し、肺炎の重症化を防ぐことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科微主物感染症学分野の土門久哲准教授と寺尾豊教授らを中心とした研究グループと、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の栁原克紀教授研究室による共同研究によるもの。研究成果は、米国科学誌「Microbiology Spectrum」電子版に公開されている。


画像はリリースより

肺炎および誤嚥性肺炎は、日本の死因のそれぞれ5位と6位を占め、合計すると年間約14万人がこれらの疾患で亡くなっている(2019年)。肺炎による死亡率は高齢者ほど高く、死亡者の95%を65歳以上が占めている。高齢社会を迎えた今日において、肺炎を予防・治療することは重要な課題である。

細菌性肺炎の治療には抗菌薬が用いられる。しかし、近年、主な肺炎起因菌である肺炎球菌の薬剤耐性化が年々進み、肺炎治療において大きな障害となっている。研究グループは、新潟市内で分離された肺炎球菌のうち、82%がマクロライド系抗菌薬の奏効しない耐性菌であると報告している。その一方で、依然としてマクロライド系抗菌薬は肺炎球菌感染症に対して有効であるとも臨床現場から報告されている。今回の研究ではそのメカニズムについて解析した。

クラリスロマイシンを作用させた結果、肺炎球菌の毒素ニューモリシンの産生量が減少

肺炎球菌はニューモリシンと呼ばれる毒素を持っており、肺の細胞や免疫細胞に微小な穴を開けて傷害し、肺を破壊する。そこで研究グループは、ニューモリシン産生に対するマクロライドの作用解析を行った。マクロライド耐性肺炎球菌株にクラリスロマイシンを作用させた結果、ニューモリシンの産生量が減少することが明らかになった。

続いて、マクロライド耐性肺炎球菌を気管支に感染させたマウスに、クラリスロマイシンを投与した。その結果、クラリスロマイシンを投与したマウスでは、通常の感染群と比較して、肺胞中でのニューモリシン量が減少した。さらに、クラリスロマイシン投与マウスでは、肺組織の破壊程度が軽度であり、血中酸素飽和度も高値を示すことが明らかになった。

耐性菌を生み出しにくいマクロライド誘導体を分子設計し、新たな治療薬開発を目指す

研究において、肺炎球菌の毒素をターゲットとした治療法が有効であることが示された。一方、薬剤耐性化の観点から、肺炎に対して積極的にマクロライドを投与していくのは現実的ではない。「今後は、北里大学との共同研究により、抗菌作用を除去し、耐性菌を生み出しにくいマクロライド誘導体を分子設計し、新たな治療薬開発を目指していく」と、研究グループは述べている。

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