欧米諸国ではピーナッツ摂取が循環器疾患の予防に有効と報告、日本は?
国立がん研究センターは9月10日、国内9の保健所管轄の住民(45~74歳)を対象に、ピーナッツの摂取量と脳卒中および虚血性心疾患発症リスクとの関連を調査し、その結果を発表した。この研究は、同センター社会と健康研究センター予防研究グループの多目的コホート研究によるもの。研究成果は、「Stroke」に掲載されている。
画像はリリースより
ピーナッツは、不飽和脂肪酸、ミネラル、ビタミン、食物繊維などを多く含んでおり、欧米諸国の先行研究では、ピーナッツの摂取が循環器疾患の予防に有効であることが報告されている。しかし、日本人ではピーナッツの摂取は欧米に比べて少なく、これまで循環器疾患との関連については報告がなく、よくわかっていなかった。
全国の45~74歳約7万5,000人を対象に調査
研究グループは、ピーナッツの摂取量と脳卒中(脳出血、脳梗塞)および虚血性心疾患発症との関連を検討した。調査の対象は、1995(平成7)年と1998(平成10年)年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2019年現在)管轄地域の45~74歳の住民。食事アンケート調査に回答し、循環器疾患、がんになっていなかった約7万5,000人を、2012(平成24)年まで追跡した。
食事アンケート調査のピーナッツ・落花生の摂取状況から1日あたりの摂取量を算出。少ない順に並べて人数が均等になるよう4つのグループに分け、最も摂取量が少ないグループを基準として、その他のグループのその後の脳卒中や虚血性心疾患の発症リスクを調べた。分析では、年齢、性別、地域、喫煙状況、飲酒量、身体活動量、精神的ストレス、野菜、果物、魚、大豆製品、食塩、エネルギー摂取量、体格、高血圧既往、糖尿病既往、高コレステロール血症の服薬を統計学的に調整し、これらの影響をできるだけ取り除いた。
摂取量が最多のグループ、最少のグループと比べ脳梗塞発症リスク20%低下
追跡期間中に3,599人が脳卒中を、849人が虚血性心疾患に罹患した。ピーナッツ摂取量が多いほど、脳卒中、脳梗塞、循環器疾患の発症リスクが低く、最も少ないグループに比べて、最も多いグループでは、脳卒中で16%、脳梗塞で20%、循環器疾患で13%の発症リスク低下との関連がみられた。一方で、ピーナッツ摂取量と、脳出血と虚血性心疾患との関連はみられなかった。男女別に分けた解析でも、結果に大きな違いはなかったという。
アジア初のピーナッツ摂取量と循環器疾患発症リスクとの関連報告、継続研究が必要
今回の結果は、米国での先行研究とほぼ同様の結果であった。ピーナッツに含まれる不飽和脂肪酸、ミネラル、ビタミン、食物繊維などの栄養素は、血圧値の低下や血中の脂質異常の改善、脳卒中の発症リスク低下との関連が報告されている。そのため、ピーナッツ摂取が多い場合に、脳卒中の発症リスク低下と関連がみられたことが考えられた。
欧米の先行研究では、虚血性心疾患の発症リスク低下との関連が報告されていたが、今回の研究では関連がみられなかった。その理由として、欧米と比べて、ピーナッツの摂取量が少ないことや、虚血性心疾患の発症者が少ないことが考えられた。
「ピーナッツ摂取量と循環器疾患の発症リスクとの関連について、アジアからの報告は本研究が初めてであり、日本を含めたアジアにおけるピーナッツ摂取の健康影響については、さらなる研究の蓄積が必要だ」と、研究グループは述べている。