大規模多施設調査、2019年に入院治療を受けた肺炎患者1,800人対象
東北大学は8月31日、日本における嚥下性肺炎の現状を把握するために、宮城県の8つの基幹病院において肺炎患者の大規模調査実施した結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野の香取幸夫教授、鈴木淳講師、池田怜吉講師の研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」(電子版)に掲載されている。
画像はリリースより
肺炎は2011年以降日本の主要な死亡原因の第3位を占めている(2019年厚生労働省調べ)。肺炎によって死亡する患者の9割以上は高齢者で、高齢者の肺炎の約8割は誤嚥性肺炎とされている。そのため、日本社会の高齢化と共に高齢者の誤嚥性肺炎は今後も増加が予想され、その実態の把握と対処が課題となっている。
研究グループは、日本における誤嚥性肺炎の特徴、および、検査と治療の現状を把握するために、宮城県の基幹病院における肺炎患者の大規模多施設調査を実施。2019年に宮城県内の8つの病院で入院治療を受けた肺炎患者1,800人を対象に調査した。
誤嚥性肺炎症例の特徴は、脳血管障害、認知症、神経疾患の併存多いなど
その結果、誤嚥性肺炎の割合は38.4%であり、高齢者、特に80歳以上で高い割合を示していた。患者数は80歳代が最も多く、2008年の報告における70歳から高くなっていた。高齢化に伴い、この10年で年齢のピークがずれたものと考えられた。
また、誤嚥性肺炎の症例の特徴として、肥満度の指標となるBMI値が低い入院時では、細菌などの感染による炎症の指標となるCRP(C反応性タンパク質)値が低い、脳血管障害、認知症、神経疾患の併存が多い、病院・介護施設に入院・入所している症例が多いといった項目が挙げられた。
2週間以上入院した誤嚥性肺炎患者に対する嚥下機能を改善する治療(嚥下介入)は51%施行されており、嚥下内視鏡検査は嚥下介入患者の20%に、嚥下透視検査は5%に施行されていた。
嚥下介入・機能評価、より一層の充実が求められる
今回の研究によって誤嚥性肺炎の現状が明らかとなった。誤嚥性肺炎に対する嚥下介入並びに嚥下機能評価はいまだ十分に行われていないことが明らかとなり、今後さらに高齢化が進むと考えられる日本において、嚥下介入・評価のより一層の充実が求められる、と研究グループは述べている。
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