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薬物代謝酵素CYP1A2、日本人ゲノム解析で活性に重要な遺伝子多型を同定-東北大ほか

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2021年08月12日 AM11:20

低頻度の遺伝子多型についてのPGx研究は少なく、詳細は不明だった

日本医療研究開発機構(AMED)は8月6日、ToMMoが公開する「日本人全ゲノムリファレンスパネル4.7KJPN」を利用して、薬物代謝酵素CYP1A2の21種類の遺伝子多型バリアントタンパク質について、酵素機能に与える影響とそのメカニズムを解明したと発表した。この研究は、東北大学大学院薬学研究科の平塚真弘准教授(同大学・東北メディカル・メガバンク機構()、(INGEM)、病院薬剤部兼任)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Personalized Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより

医薬品の効果や副作用発現には遺伝的な個人差が存在し、患者個々に効果的かつ効率的な薬物療法を実施するための、予測性の高いバイオマーカーの同定が求められている。遺伝子配列が複数か所異なっていてもタンパク質の機能には全く影響がない場合や、逆に遺伝子上の一塩基多型のみでタンパク質の機能が著しく変化する場合もあり、ゲノム解析だけでなくタンパク質の機能変化解析が極めて重要だ。特に、薬物代謝酵素は医薬品の体内動態に関わる最も重要な分子であり、それらの遺伝的バリアントがヒトの薬効・副作用発現の個人差に大きく影響すると考えられている。しかし、薬物代謝酵素の遺伝的バリアントが実際にどの程度機能変化を起こすかについては不明な部分が多く、ファーマコゲノミクス(PGx)検査が臨床で実施されているものは一部にすぎない。したがって、今後、個人のゲノム解析情報が蓄積しても、それらに由来するバリアント酵素の機能変化が正確に評価・予測されなくては、PGx検査のゲノム医療への応用は困難を極めることになる。

平塚准教授らの研究グループはこれまでに、独自の手法により、約300種以上のアミノ酸置換型薬物代謝酵素バリアントを作製し、それらの活性変化を解析することで薬物応答性を予測できる有用なPGx情報を明らかにしてきた。しかし、国内外の他の研究では、存在頻度の高い遺伝子多型に関するものがほとんどであり、低頻度多型に関しては、酵素機能解析はおろか、その存在そのものが未知であるという課題が残っている。

アミノ酸置換型CYP1A2バリアントを人工的に発現させ、網羅的な機能解析に成功

研究グループは今回、ToMMoが構築した日本人4,773人のコホートで同定された21種のCYP1A2新規レアバリアントの酵素機能的特徴を明らかにした。具体的には、各CYP1A2バリアントタンパク質を哺乳動物細胞株発現系で発現させ、フェナセチンをプローブ基質とした酵素反応速度論的解析や3次元立体構造シミュレーションモデルを用いたin silicoのタンパク質-リガンドドッキング解析等を行った。

その結果、16種のCYP1A2(Arg34Trp、Glu44Lys、Gly47Asp、Arg79His、Asp104Tyr、Ala150Asp、Thr324Ile、Gln344His、Ile351Thr、Ile351Met、Arg356Gln、Gly454Asp、Arg457Trp、Val462Leu、Ile474AsnおよびHis501Tyr)では、ホロ酵素量の有意な減少や酵素活性が低下することが明らかになった。4種のバリアント(Leu98Gln、Gly233Arg、Ser380delおよびIle401Thr)については、ホロ酵素量も酵素活性も定量限界以下になることが判明した。これらの活性消失型バリアントにおけるin silico解析の結果、ヘム結合部位に隣接するアミノ酸残基の相互作用に違いがあることが判明し、これがホロ酵素としてスペクトル検出できない理由と考えられた。さらに、基質認識部位や活性部位にも著しい構造的な変化が認められ、これらのバリアントが示す酵素活性消失の原因であるという仮説が支持された。

患者個々の薬物応答性を高精度に予測可能なPGxコンパニオン診断薬の開発などに期待

今回の研究は、東北メディカル・メガバンク機構が構築した一般住民バイオバンクの全ゲノム解析情報を活用し、CYP1A2だけでなく、さまざまな薬物代謝酵素における約1,000種の組換えバリアントを作製・機能評価を目的としている。これにより、これまで見落とされてきた薬物代謝酵素活性に影響を及ぼす重要な低頻度遺伝子多型を同定し、遺伝子型から表現型を高精度で予測できる薬物応答性予測パネルを構築できると考えられる。

「さらに今後、薬物代謝酵素の発現量に影響を及ぼすプロモーター・イントロン多型、miRNA、エピゲノム、臨床研究情報等を加えることにより、患者個々の薬物応答性を高精度に予測できるPGxコンパニオン診断薬の開発や医療実装が期待できる」と、研究グループは述べている。

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