要介護認定を受けていない約18万人の高齢者データを解析
新潟大学は7月26日、65歳以上の高齢者でフレイルがある場合、フレイルがない高齢者と比べて約1.9倍肺炎にかかりやすく、また、1.8倍肺炎が重症化しやすい(入院措置になりやすい)ことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科国際保健学分野の齋藤孔良助教、菖蒲川由郷特任教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific reports」に掲載されている。
画像はリリースより
肺炎は日本を含む世界中で高齢者の死因の上位を占める。フレイルとは加齢や病気による心身の衰えにより要介護になるリスクが高い状態のこと。これまでの研究で、寝たきり等要介護状態の高齢者では誤嚥性肺炎が起こりやすいことがわかっている。しかし、要介護状態ではないがフレイルの高齢者が、肺炎になりやすく重症化しやすいのかは不明だった。
今回研究グループは、フレイル高齢者は肺炎にかかりやすく重症化しやすいのかを調べるため、一般社団法人日本老年学的評価研究機構(JAGES:Japan Gerontological Evaluation Study)が、2016年10月~2017年1月の期間に行った約18万人の、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者の健康と暮らしに関するアンケート調査データを統計解析した。調査対象者が過去1年間で肺炎にかかったか、また、肺炎かインフルエンザにかかった後に肺炎で入院したかを調べた。
フレイルの判定は、厚生労働省が開発した基本チェックリストにより行った。フレイル以外で肺炎に関係する可能性のある年齢、性、教育年数、所得、家族構成、婚姻状況、喫煙、肺炎にかかりやすく重症化しやすくなる病気(糖尿病、呼吸器疾患、心疾患、腎臓疾患)、肺炎球菌予防接種等の影響を統計学的な方法で除去した。
フレイル前段階の高齢者でもフレイルではない高齢者より1.3倍肺炎にかかりやすい
統計解析の結果、フレイル高齢者は、フレイルではない高齢者と比べて、約1.9倍肺炎にかかりやすい可能性があることが明らかになった。また、フレイルの前段階にある高齢者もフレイルではない高齢者に比べて1.3倍肺炎にかかりやすいこともわかった。フレイル高齢者は、フレイルではない高齢者と比べて1.8倍肺炎で入院しやすい可能性があることも明らかになった。
また、基本チェックリストにより、口腔機能低下またはうつ状態に該当した高齢者は肺炎にかかりやすく、日常生活動作の低下または閉じこもりに該当する高齢者では、肺炎で入院しやすいことがわかった。さらに、運動機能低下または低栄養状態に該当する高齢者では肺炎になりやすく、かつ肺炎で入院しやすいこともわかった。
フレイルを調べることで、高齢者が肺炎にかかりやすいのか、肺炎が重症化しやすいのかがわかる可能性がある。「フレイルを予防することが、肺炎予防にもつながる可能性がある。今後は、高齢者で重症化しやすいインフルエンザや新型コロナウイルス感染症にもフレイルが関係しているのか等を明らかにしていく予定だ」と、研究グループは述べている。
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