感染者が確認された合計42世帯対象・フィリピンでの疫学調査より
東北大学は7月14日、RSウイルスの家庭内での感染の多くは、家族がRSウイルスに感染して症状が出る前の期間も含めて約7日以内に発生することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の微生物学分野押谷仁教授ら、フィリピン熱帯医学研究所およびシンガポール国立大学の研究グループによるもの。研究成果は、「American Journal of Epidemiology」電子版に掲載されている。
画像はリリースより
RSウイルスは、主に5歳未満児で急性下気道感染症を引き起こす、小児急性呼吸器感染症の主要な原因ウイルスであり、日本では秋から冬にかけて流行が見られる。生涯に何度も感染するため、年長児や大人を含む家庭内での感染や保育施設などでの集団感染が多くあることが注目されている。
今回、研究グループは、家庭内の誰かがRSウイルスに感染した後、他の家族へ感染させるリスクについて調査。2018~19年、フィリピンで生じたRSウイルスの流行期間中に、研究登録者に咳や呼吸困難などの症状があるかどうかを観察し、症状がある場合は、感染者が鼻から排出するウイルス量を測定するために鼻腔拭い液の採取・検査を実施して感染者を見つけた。感染者が確認された合計42世帯を対象に、その家族から定期的にデータと検体を集めた。得られたデータを用いて、家庭内でどのように感染が広がるか調べた。
家族への感染の約3割、最初の感染者の症状が現れていない段階で生じた可能性
排出ウイルス量の変化から家族がいつ感染したか推定したところ、そのほとんどが最初の家族の感染から7日以内に感染していた。家族への感染の約3割は、最初の感染者の症状がまだ現れていない段階で起きたことが推測されたという。
研究グループは、同研究結果について「これまでに知られていなかったRSウイルスの感染伝播リスクの経時的な変化を明らかにした重要な報告」とコメント。患者が発症してRSウイルスの感染がわかった時には、その患者からすでに感染して発症前の段階にある人がその家庭や施設内にいる可能性が高い、ということを考慮した対策が必要となる。このことを踏まえた重点的な感染予防対策の考案に貢献できることが期待される、としている。
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