日本人6万人以上を平均7.7年間追跡調査したデータを用いて
京都府立医科大学は6月25日、座っている時間と死亡率の関係に関する研究を行い、6万人を超える日本人を7.7年間追跡したデータを用いて、座位時間が長いほど死亡率が増加することを確認したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科地域保健医療疫学の小山晃英講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Heart Association」に掲載されている。
画像はリリースより
座位時間が長いことで、血行不良と代謝の低下を引き起こすことにより、死亡率増加や循環器疾患発症と関わることがいくつかの国から報告されている。一方、他国と比較して、日本国内での座位時間に着目した研究は限られていた。これまでに日本人の解析対象者が1万人を超えるような大規模調査としては、仕事中に座っている時間と死亡率の関係、テレビ視聴時間と循環器疾患死亡の関係が報告されている。
今回、J-MICC STUDY(日本多施設共同コーホート研究)の調査に参加した、6万4,456人(男性2万9,022人、女性3万5,434人)を対象者とし、平均7.7年間追跡調査したデータを解析した。睡眠時間を除く日中の行動時間は、国際標準化身体活動質問票をベースとした質問票により、日中の座位時間の長さと、全死亡(全ての死因を含む)の関係を、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の有無に分け、検討した。
日中の座位時間は、質問票をもとに4群(5時間未満、5時間から7時間未満、7時間から9時間未満、9時間以上)に分けて解析した。
調整因子は、年齢、性別、居住地域、飲酒の有無、喫煙の有無、脳卒中既往歴、虚血性心疾患既往歴、高血圧・脂質異常症・糖尿病に対する服薬状況、余暇時間の活動量(METs)とした。
生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)3つ保有では、死亡率さらに高く
参加者全体では、日中の座位時間が2時間増えるごとに、死亡率が15%増加することが認められた。生活習慣病の有病者について、脂質異常症は18%、高血圧は20%、糖尿病は27%の死亡率増加が認められたという。
生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の保有数に応じて、座位時間と死亡の関係は大きくなり、生活習慣病を保有していない人では、日中の座位時間が2時間増えるごとに、死亡率が13%増加となるが、3つ全て保有している人では、死亡率が42%高くなることが示された。
余暇時間の運動活動量「増」でも完全に抑制されず
次に、身体活動量が増えると座位時間が長いことによる死亡のリスクを下げることができるか検討するために、METsの量に応じて、4群に分けて解析。
その結果、余暇時間中の身体活動が増えても、座位時間による死亡率の減少効果はわずかだったとし、日中の座位時間の長さと死亡の関連を、完全に抑制するには至らないことが明らかとなった。
コロナ禍のテレワーク普及で座位時間延長の可能性も、連続した座位時間をなくす心がけを
座位時間が与える健康への悪影響については多くの報告があり、他国ではガイドラインを作成するなど、座位時間を少なくするよう提言している。国際標準化身体活動質問票が作られた2011年のデータ(日本人5,000人)によると、日本人の座位時間は、世界で一番長いという結果が出ている。一方、日本人を対象とした座位時間に関する大規模研究は限られた条件下のみであり、研究グループは、座位時間が及ぼす健康影響に関する研究に取り組み、日中の座位時間と生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の関係や内臓脂肪との関係を報告してきた。
いずれの研究も余暇の身体活動量を増やしても、座位時間が及ぼす健康影響の減少効果はわずかであることから、成人の座っている時間を短縮することを実践することが求められるとしている。
コロナ禍のテレワーク普及により、今後も在宅業務による家庭内デスクワークの増加が予測される。在宅業務は、通勤時間が削減されるため、身体活動の低下に加え、座位時間の延長につながる可能性があります。連続する座位時間を中断することの重要性も報告されているため、こまめに動くことで連続した座位時間をなくす心がけを持つことが大事だと考える、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・京都府立医科大学 新着ニュース