乳がん診断時のビタミンDレベルがアウトカムと関連?
乳がん診断時のビタミンDレベルが正常だった患者では、長期アウトカムが良好である可能性のあることが、米ロズウェルパーク総合がんセンターがん予防および管理部門のSong Yao氏らによる新たな研究で明らかにされた。詳細は、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO 2021、6月4〜8日、オンライン開催)で発表された。
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Yao氏らは、3,995人の乳がん患者を対象に、血清中のビタミンD代謝物である25-ヒドロキシビタミンD〔25(OH)D〕レベルを測定した。ビタミンDの大部分は25(OH)Dへと代謝されるため、その濃度はビタミンD欠乏の有無の指標となる。対象者は、乳がん患者のサバイバーシップに関する大規模コホート研究の登録者であり、血清サンプルは乳がん診断時に採取されたものだった。対象者の25(OH)D濃度を指標にビタミンD充足度を調べ、「不足」(20ng/mL未満;不足群)、「不十分」(20ng/mL以上30ng/dL未満)、「十分(正常)」(30ng/mL;正常群)の3群に分類した。その上で、ビタミンDレベルと全生存期間(OS)、乳がん特異的生存率(BCSS)、無再発生存期間(RFS)、無浸潤疾患生存期間(IDFS)との関連を検討した。追跡期間中央値は9.6年であった。
その結果、正常群では不足群に比べて、アウトカムが良好であることが明らかになった。各アウトカムのハザード比は、OSで0.73(95%信頼区間0.58〜0.91)、BCSSで0.78(同0.56〜1.09)、RFSで0.79(同0.65〜0.97)、IDFSで0.82(同0.68〜0.99)であった。このような関連は、腫瘍のエストロゲン受容体(ER)の有無に関係なく認められたが、より進行した乳がん患者およびBMIが標準または低体重に分類される患者では、関連がより強かった。
この研究ではさらに、ビタミンDレベルは黒人患者で最も低いことも判明した。黒人患者では白人患者に比べて、乳がん診断後のアウトカムが概して不良であることが知られている。それゆえYao氏らは、この結果を、「ビタミンDレベルの低さが黒人患者のアウトカム不良の一因である可能性を示すもの」と解釈している。
以上のことからYao氏らは、「乳がんサバイバーを長期にわたって追跡したこの大規模観察研究から、乳がん患者、特に黒人患者とがんのステージがより進行した患者では、十分なビタミンDレベルを維持すべきことに対する、非常に強力なエビデンスが得られた」と述べている。
今回の研究には関与していない、米レノックス・ヒル病院乳腺外科のPaul Baron氏も、「乳がん患者の長期生存を改善するためには、十分なビタミンDレベルが鍵となる可能性を明らかにした、重要な研究結果だ」と高く評価している。
一方、米ノースウェル・ヘルス傘下Katz Institute for Women’s Healthの乳がんの専門家であるAlice Police氏は、黒人と白人の乳がん患者でのアウトカムの差に言及し、「乳がん診断時のビタミンDレベルが高いほど、両群間でのアウトカムの差は小さかった。つまり、ビタミンDの摂取がアウトカムの差をなくすための重要なステップになる可能性がある」と期待を示している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。
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