製薬会社のヤンセンファーマは多発性骨髄腫治療薬のダラツムマブ皮下投与製剤 「ダラキューロ配合皮下注」(一般名:ダラツムマブ〈遺伝子組換え〉・ボルヒアルロニダーゼアルファ〈遺伝子組換え)〉を発売したことを踏まえ6月3日にセミナーを開いた。セミナーで日本赤十字社医療センターの鈴木憲史氏(骨髄腫アミロイドーシスセンター顧問)は、「基本的には点滴静注から皮下注に置き換わっていくのではないか」と期待を示した。
ダラツムマブの点滴静注製剤は、複数の治療レジメンで承認されており、日本血液学会の造血器腫瘍診療ガイドラインをはじめ、全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)や欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のガイドラインで推奨されている。しかし、投与する際は500~1000mLの輸液が必要で、投与に約3~7時間かかるため、医療者、患者双方の負担が大きいという問題があった。
皮下注のダラキューロでは、投与時間が約3~5分と大幅に短縮。固定用量のため薬剤調製手順も簡略化されることで、医療者や患者の負担軽減が見込まれている。
同薬承認の根拠となったのは、日本人を含む再発または難治性の多発性骨髄腫患者を対象とした国際共同第3相試験(MMY3012試験 [COLUMBA試験])、国内第1相試験(MMY1008試験)、海外第1b相試験(MMY1004試験 [PAVO試験])、国際共同第2相試験(MMY2040試験 [PLEIADES試験])。3月に承認を取得し、5月19日に発売した。
鈴木憲史氏(ヤンセンファーマ提供)
セミナーで鈴木氏は多発性骨髄腫について、治療が進み延命できるようになってきたとし、「治療に多くの時間を費やすのではなく、今まで通りの生活を維持しながら治療できることが期待されている」と指摘。ダラキューロの登場により、「患者さんの病院滞在時間が減り、やりたいことに時間を費やせる」と評価した。医療者の負担軽減につながることなどからも、「基本的には点滴製剤から皮下注に置き換わっていくのではないか」との見方を示した。副作用については、「皮下注で独特の有害事象はない」としつつ、皮下注では副作用が発現するまで点滴静注製剤よりも時間がかかるとして、注意を呼びかけた。副作用発現率は皮下注の方が低いとしている。
鈴木氏は、「これまで患者さんは1週間のうち1日を治療に費やしてきた。(ダラキューロの登場は)多くの患者さんの希望の星になっていると思う」と期待を寄せた。
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