岩手県地域住民コホート調査参加3万2,675人のデータで検討
岩手医科大学は5月18日、20歳以降の成人期の10㎏以上の体重増加と、それに関連する生活習慣および生活習慣病を解析し、成人期の体重増加を予防することの重要性を示したと発表した。この研究は、同大いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)、同大内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科分野の武部典子講師と石垣泰教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Diabetes, Metabolic Syndrome and Obesity:Targets and Therapy」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
これまでの研究で、日本人などの東アジア民族は欧米人に比べ軽度の肥満でも内臓脂肪が蓄積しやすく、代謝異常を合併しやすいことが報告されている。また、20歳まではやせ型体型であっても、成人後に体重が増加することは現在の体重とは独立して、メタボリックシンドローム、高血圧などと関連することも報告されている。
厚生労働省の平成22年(2010)「国民健康・栄養調査」によれば、岩手県の肥満者(BMI≧25
kg/m2)の割合は38.7%と全国で第7位であり、肥満を減らすためにその原因を明らかにする
ことが重要な課題となっている。成人期の体重増加に関連するリスク因子を理解することは、それに連なる生活習慣病の予防の一助となる事が期待できる。しかし、アジア人における成人期の体重増加とそれに関連する生活習慣関連因子についての詳細な検討はなかった。
今回の研究では、IMMが実施した岩手県地域住民コホート調査に参加した3万2,675人のデータを用いて、20歳以降の成人期の体重増加と生活習慣病および生活習慣との関連について調査。20歳時以降の体重増加が10kg以上の群3,601人(男性1,709人/女性1,892人)を体重増加群とし、この群と性、年齢、現在の体格指数を傾向スコア(Propensity Score)でマッチさせた20歳以降の体重増加が10kg未満の群3,601人(男性1,636人/女性1,965人)を体重非増加群とした。
喫煙歴・朝食の欠食など、成人期肥満との関連「高」
両群を比較検討した結果、現在の体格指数が同程度であっても、体重増加群のウエスト周囲長は非体重増加群よりも大きいことが判明。また、体重増加群では、非増加群に比較して高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症の有病率が高く、メタボリックシンドロームに該当する例が多いこともわかった。
成人期体重増加に関連する生活習慣関連因子を、性、年齢のほか、肥満リスクと考えられる因子で解析。その結果、喫煙歴(オッズ比1.163)、朝食の欠食(同1.252)、睡眠時間9時間以上(同1.613対5時間以上7時間未満)が成人期肥満との関連が高いことがわかった。また、1日1時間以上の歩行時間は成人期肥満との関連が低いことがわかったという。
成人期体重増加、高血圧症、脂質異常症、メタボなどと有意な関連
次に、成人期体重増加と生活習慣病との関連について、性、年齢のほか、疾病リスクと考えられる因子で調整し、解析。その結果、成人期体重増加は、高血圧症(オッズ比1.260)、脂質異常症(同1.341)、高尿酸血症(同1.307)、メタボリックシンドローム(同1.460)と有意な関連があることがわかったとしている。
成人期に体重を増加させないことが、生活習慣病予防の一助
20歳以降の成人期の体重増加は、過去の喫煙歴、9時間以上の長い睡眠時間、朝食の欠食、日常生活での活動量が少ないことと関連していた。また、成人期に体重が増加した群では、ウエスト周囲長が大きく、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、メタボリックシンドロームの有病率が高いことがわかった。
規則正しい運動や食事、適切な睡眠時間などの生活習慣に留意し、成人期に体重を増加させないことが、生活習慣病予防の一助となることが期待される、と研究グループは述べている。
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・岩手医科大学 プレスリリース