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日本人の遺伝的多様性の特徴やがんの新規構造異常を発見、開発した新手法で-東大ほか

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2021年05月10日 AM11:45

期待の長鎖シークエンサー、NGSでは検出困難な多型や変異の検出手法確立へ

東京大学は5月6日、長鎖シークエンサーを用いた日本人の遺伝的多様性とがんの体細胞変異の包括的解析を行ったことを発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科国際保健学専攻の藤本明洋教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Genome Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより

近年の次世代シークエンサー(NGS)に代表される塩基配列決定技術の発展により、がんや遺伝性疾患の原因変異探索が行われている。しかし、次世代シークエンサーは決定できる塩基の長さ(リード長)が短く、逆位や転座などの構造異常の検出は困難であると考えられていた。近年、リード長が長い長鎖シークエンサーが開発され、遺伝学研究への導入が進みつつある。長鎖シークエンサーを用いることで、次世代シークエンサーでは検出が困難な多型や変異が検出されると期待される。しかし、長鎖シークエンサーはエラー率の高さなどの問題のため、多型や変異の検出の手法は確立していない。

NGSとエラーパターンを比較検討、CAMPHORソフトウエアを開発

そこで研究グループは、長鎖シークエンサーのデータから遺伝的多様性と体細胞変異を検出する手法を開発し、ヒトの全ゲノムシークエンスを行うことで、ヒトの遺伝的多様性と体細胞変異の全体像の解明を試みた。

ICGC(国際がんゲノムコンソーシアム)の研究において次世代シークエンサーで解析された11人の肝臓がんと正常組織由来のDNAサンプル(合計22サンプル)の全ゲノムシークエンスを、(Oxford Nanopore)を用いて行った(サンプルは理化学研究所の中川英刀チームリーダーより提供された)。そしてエラーのパターンを検討し、変異/多型検出手法(CAMPHORソフトウエア)を開発した。

挿入と欠失は短いものが多く、挿入の9割はトランスポゾン由来

100bp以上の挿入・欠失と逆位・転座を対象とし、遺伝的多様性と体細胞変異を検出した結果、遺伝的多様性解析において8,004挿入、6,389欠失、27逆位が検出された。挿入と欠失は短いものが多かったが、挿入には、300塩基付近の長さのもの、6,000塩基付近の長さのものが多い特徴があった。

挿入・欠失の配列の特徴を調べた結果、挿入の9割はトランスポゾン由来である一方、トランスポゾンが関係している欠失は少ないことが明らかになった。また、processed pseudogeneの多型が15個検出された。processed pseudogeneの起源は、多くの組織で高く発現している遺伝子であることが明らかとなった。

肝臓がんサンプルで新規体細胞変異420個、およびNAHRによる欠失を発見

肝臓がんの体細胞変異解析では、919個の体細胞変異が検出された。そのうち、499個は先行研究で次世代シークエンサーを用いて検出されていたものであり、420個は新規であった。さらに、構造異常の組み合わせが一部明らかになった。

構造異常の切断点の詳細な解析から、構造異常の原因を推定したところ、非相同組み替え(NAHR)、alternative end-joining(alt-EJ)、FoSTeS/MMBIR、非相同末端結合修復(NHEJ)によって生じたと考えられる構造異常が検出された。またそれらの割合は、体細胞変異と遺伝的多様性で異なっていた。NAHRによる欠失は、短鎖次世代シークエンサーを用いた先行研究では検出されていなかったことから、長鎖シークエンス技術は従来の研究では見逃されている構造異常を検出するために有用であることが示唆された。

研究グループは、「本研究では長鎖シークエンス技術の解析手法を構築するとともに、ヒトゲノムの多型や変異の全体像の解析を行ったが、今回開発した手法は遺伝性疾患の原因遺伝子探索やがんの変異解析にも利用可能であり、貢献が期待される」と、述べている。(QLifePro編集部)

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