GVSのヒラメ筋H反射による既存評価法の再現性・左右差・立位バランスとの関連は?
畿央大学は5月6日、ヒトにおける前庭脊髄路の機能評価の再現性や左右差、立位バランスとの関連性を明らかにする研究報告を行ったことを発表した。この研究は、同大大学院の中村潤二客員准教授(西大和リハビリテーション病院)、岡田洋平准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Neuroscience Letters」に掲載されている。
画像はリリースより
ヒトは多くの場合、姿勢バランスを非自覚的にコントロールしている。前庭脊髄路は非自覚的な姿勢のコントロールを行う上で重要な役割を果たす神経機構の1つだ。ヒトにおいて非侵襲的に前庭脊髄路の興奮性を評価する方法として、ヒラメ筋H反射を誘発する脛骨神経刺激の前に直流前庭電気刺激(galvanic vestibular stimulation;GVS)を条件刺激として与えることにより、ヒラメ筋H反射の促通率を評価するという神経生理学的方法がある。この方法は、耳後部に電極を貼付し直流電流で経皮的に前庭系を刺激し(GVS)、前庭神経、前庭脊髄路を介して、脊髄の抗重力筋の運動ニューロン群の興奮性の変化を評価していると考えられている。しかし、この方法の再現性や左右差、姿勢バランスとの関連については明らかにされていなかった。
健常者では再現性十分で左右差なし、立位では下肢の方へ荷重偏移
今回研究グループは、15人の健常者を対象に、GVSを行うことによるヒラメ筋H反射の促通率について検証した。計測は無作為の順番で左右それぞれ行い、休息の後に再度左右それぞれ、合計2セッションを行った。その結果、1セッション目と2セッション目の左右のGVSにおけるH反射促通の程度のセッション間再現性は十分であり、各セッション共に左右差はないことが示された。
また、重心動揺計を用いて4条件(開眼位、閉眼位、ラバーマット上での開眼位、ラバーマット上での閉眼位)での立位姿勢を計測した結果、前庭感覚への依存度が高い「ラバーマット上での閉眼立位」状態での足圧中心の内外側の偏移位置と、ヒラメ筋H反射促通率の左右比との間に正の相関関係があることが示された。
臨床応用の可能性を示唆、前庭疾患などを対象に今後検討
今回の研究成果は、GVSによるヒラメ筋H反射の促通率を評価するという前庭脊髄路興奮性の神経生理学的方法の臨床応用の可能性を示唆するものであり、姿勢コントロールに異常のある人で、特に左右差の顕著な症候を呈する場合に適用する上で重要な知見であると考えられるという。
「今後は脳卒中やパーキンソン病、前庭疾患などを対象に前庭脊髄路興奮性の評価を行い、姿勢制御異常の病態と前庭脊髄路機能の関連性について検証し、介入の可能性についても模索していきたい」と、研究グループは述べている。
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