腎臓にのみ発現、尿中に最も多く分泌されるタンパク質ウロモジュリン
東京医科歯科大学は4月23日、多彩な病態に関わるウロモジュリンタンパク質の新たな制御機構を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科腎臓内科学分野の内田信一教授、森崇寧助教と七松東大学院生の研究グループによるもの。研究成果は、「Hypertension」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
ウロモジュリンは腎臓にのみ発現し、尿中に最も多く分泌されるタンパク質。尿中ウロモジュリンは生理的に尿路感染症や腎結石を予防する一方で、分泌不全により腎臓に蓄積すると高血圧症や慢性腎臓病といった病態の発症と関わることがわかっている。ウロモジュリン尿中分泌を上手に制御することができれば、これらの疾患に対する画期的な治療法として期待できる。しかし、ウロモジュリン尿中分泌の制御機構は不明な点が多くあるのが現状だ。
分泌機序、バゾプレシン/cAMP シグナルの下流におけるPKA活性化が重要で、プロテアーゼ活性上昇も関与
今回の研究では、抗利尿ホルモンであるバゾプレシンがウロモジュリン尿中分泌を促進することを明らかにした。
野生型マウスにバゾプレシン2型受容体アゴニストであるデスモプレシンを投与すると、ウロモジュリン尿中分泌が著明に増加。尿中への分泌増加に伴い、腎臓での発現量は減少した。
バゾプレシンは細胞内で環状アデノシン一リン酸(cAMP)を介して作用を発揮する。今回の現象の分子メカニズムを明らかにするため、培養細胞を用いた実験を行ったところ、腎尿細管上皮細胞でも、バゾプレシン/cAMPシグナルはウロモジュリンの頂端膜側培地への分泌を促進した。また、活性化薬および阻害薬を用いた検討により、cAMPの下流シグナルとしてプロテインキナーゼA(PKA)の活性が重要であることを示した。
さらに、最終的な分泌機序として、プロテアーゼ活性上昇が関与していることを、阻害薬を用いた検討で明らかにした。
高血圧症や慢性腎臓病への新規治療戦略の基盤として期待
今回の研究は、バゾプレシン/cAMP/PKAシグナルがウロモジュリン尿中分泌の生理的な刺激因子であることを示した。バゾプレシンは脱水時に血中濃度が上昇し、尿量を減少させるように働くが、脱水時は尿路感染症や腎結石のリスクが高い状況だ。バゾプレシンにより、尿路結石症や腎結石を予防するウロモジュリンの尿中分泌が促されることは、理に叶った生体防御機構と言える。
加えて、ウロモジュリンの腎臓における発現量を減少させるシグナルを発見した点でも同研究の成果は意義深いという。今回の研究成果は、尿路結石症、腎結石のみならず、高血圧症や慢性腎臓病に対する新たな治療戦略の基盤と期待される、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東京医科歯科大学 プレスリリース