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肺MAC症の発症関連遺伝子を日本人GWASで発見-慶大ほか

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2021年04月26日 AM11:15

主に中高年以降のやせ型の女性等に好発、疾患感受性遺伝子がある可能性

慶應義塾大学は4月22日、近年急増する難治性呼吸器感染症、肺MAC症に対して、世界初となるゲノムワイド関連解析の実施報告を行ったことを発表した。この研究は、同大医学部感染症学教室の南宮湖専任講師(発表時:日本学術振興会特別研究員、米国国立衛生研究所博士研究員)、長谷川直樹教授、国立国際医療研究センターゲノム医科学プロジェクト(戸山)の大前陽輔上級研究員、徳永勝士プロジェクト長らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Respiratory Journal」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

(NTM)症は、結核菌群とらい菌以外の抗酸菌による感染症であり、主に中高年以降の女性や既存肺疾患のある患者に難治性の慢性進行性呼吸器感染症を引き起こす。肺NTM症の罹患率は世界中で上昇しており、日本でも急激に上昇している。すでに肺結核の罹患率を超え、同疾患に対する包括的対策の社会的重要性が高まっている。

AMR化対策の観点からも抗菌薬以外の治療戦略が求められる

肺NTM症に対する現在の標準治療は長期間におよぶ複数の抗菌薬治療だが、現行の抗菌薬治療では効果が限られ、投薬中止後も高い確率で再発し、中には一生涯抗菌薬を要する患者もいる。さらに、抗菌薬の副作用や菌の抗菌薬に対する耐性獲得が起こると難治化し、死亡に至る例も多い。つまり、肺NTM症は治癒が困難な疾患であり、現行抗菌薬の効果が十分でなく、新規抗菌薬開発も危機的状態にある。また、長期抗菌薬使用に伴い出現する菌の薬剤耐性(Antimicrobial Resistance:)化対策の観点からも、抗菌薬以外の新たな着想による治療戦略の創出が求められてきた。

NTMは水や土壌等の環境中に常在する弱毒菌であるにもかかわらず、アジア人集団の罹患率が他の集団に比較して高いこと、家族集積性があること、やせ型の中高年女性に好発すること、などから疾患感受性遺伝子の存在が強く示唆されていた。しかし、これまでに肺NTM症や肺NTM症のうち約90%を占める肺MAC症において、どのような疾患感受性遺伝子が存在するかを調べた大規模な研究は報告されていなかった。

CHP2領域のSNP「rs109592」が肺MAC症発症リスクと高く関連

研究グループは、肺MAC症の発症に関連する遺伝的変異を探索するために、慶應義塾大学病院、複十字病院を中心とする関東近郊の医療機関の協力により、1,066人の肺 MAC症患者コホートと対照群について世界で初めてゲノムワイド関連解析を実施。結果、rs109592という一塩基多型(SNP)が、肺MAC症の発症リスクと高い関連性を示すことが確認された。

さらに、韓国サムスンメディカルセンターや米国国立衛生研究所との国際共同研究により、この遺伝的変異は、日本人集団のみならず、韓国人集団やヨーロッパ人集団においても関連していることが示された。このSNPは、体内においてイオンやpHの調整に重要な役割を担うCalcineurin B homologous protein 2()領域に存在していた。

これらの結果から、「肺MAC症の疾患感受性遺伝子の一部が明らかになり、新たな治療戦略の開発および疾患感受性臨床現場における遺伝子型に基づいた個別化医療にも役立つことが期待される」と、研究グループは述べている。

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