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子宮体がん、子宮鏡画像を用いたAI自動診断システムの開発に成功-東大病院ほか

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2021年04月07日 AM10:05

少ない症例数でも正診率を向上させる独自のアルゴリズムを開発

東京大学医学部附属病院は4月1日、子宮体がん検診の重要なデバイスとして子宮鏡検査を一般化することを目的とし、人工知能(AI)を用いた子宮鏡における子宮体がん自動診断システムの開発に成功したと発表した。この研究は、同大医学部(産婦人科学講座)/同大医学部附属病院女性診療科・産科の曾根献文講師、同大大学院医学系研究科 生殖・発達・加齢医学専攻 髙橋優大学院生、同大大学院医学系研究科 生殖・発達・加齢医学専攻 産婦人科学講座/同大医学部附属病院 女性外科の大須賀穣教授ら、およびPredicthy合同会社の野田勝彦氏、吉田要氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。


画像はリリースより

子宮体がんは、婦人科がんにおいて最も罹患数が多い疾患であり、国内外問わず、近年増加傾向にある。早期であればホルモン治療によって子宮温存が可能だが、進行期、再発症例であると難治性のことが多く、早期発見が重要となる。しかし、子宮体がん検診に関しては確立されたスクリーニング法がないのが現状だ。その理由として、子宮体部の細胞診は盲目的な操作であり、子宮頸がんの検診法である細胞診と比較して正診率が高くないことが挙げられる。

一方、子宮鏡検査は、腟を経由して子宮内腔を細径のファイバースコープを用いて観察する内視鏡検査であり、外来で麻酔をせずに行える簡便で有用な検査法だ。子宮鏡の一般的な用途としては、子宮筋腫やポリープなどの良性腫瘍の診断や、着床不全の原因検索が挙げられるが、子宮体がんの診断に使用する報告も散見されており、東大病院においても子宮体がんや、その前がん病変である子宮内膜増殖症の診断補助に使用している実績がある。

このような背景のもと、研究グループは、子宮体がん検診の重要なデバイスとして子宮鏡検査を一般化することを目的とし、深層学習を用いた子宮鏡における子宮体がん自動診断システムを開発した。また、これまで医療画像情報を用いた深層学習研究については、良好な正診率を得るために膨大な症例数が必要であることから、疾患次第では症例数を確保できない場合もあった。この問題を解決するため、同研究では、少ない症例数でも正診率を向上させる独自のアルゴリズムを開発した。

正診率90%以上に成功、より簡便で正診率の高い子宮体がん検診法の確立に期待

研究では、東大病院を受診した20歳以上の患者で、2011年4月~2019年9月に子宮鏡を用いて行われた177症例(正常子宮内膜:60例、子宮筋腫:21例、子宮内膜ポリープ:60例、子宮内膜異型増殖症:15例、:21例)を対象にした。177例の動画を約40万の静止画に変換し、それらの画像を悪性グループ(子宮内膜異型増殖症、)、非悪性グループ(正常子宮内膜、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫)に分けて、深層学習を行った。学習した画像としては、全ての画像を含むデータセットと子宮内腔の画像のみを抽出したデータセットの2種類を使用。また、学習は3種類のネットワークモデル(Xception、MobileNetV2、EfficientNetB0)を用いて、それらの比較も行った。

まず、標準のアルゴリズムで評価したところ、正診率は約80%程度となり、各ネットワークモデル間の正診率に大きな差はなかった。次に、少ない症例数で正診率を上げる方法として、連続法というアルゴリズムを開発した。連続法とは、50枚以上連続で画像が悪性として分類された場合、その症例を悪性と判定する方法だ。このアルゴリズムを用いて正診率を85%以上に向上させることができたという。さらに、正診率を上げる方法として、ネットワークモデル組み合わせ法を開発。この方法は3種類のネットワークモデルを複数回学習させて得られた72個のモデルを同時に稼働させて、どれか一つのモデルが悪性と判定した場合、その症例を悪性と診断する方法だ。この方法により、正診率を90%以上にまで向上させることができたとしている。

「今後は、新たに開発した子宮体がん自動診断システムの正診率を100%近くまで向上させることを目的として、さらに症例数を増やすため、多施設共同研究を開始する予定。また社会実装に向けて、このAIエンジンを搭載した子宮鏡の実用化も目指す」と、研究グループは述べている。同研究で新たに開発されたシステムによって、将来、より簡便で正診率の高い子宮体がん検診法が確立されることが期待される。

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