垂直感染で知られるHTLV-1、都市部で増加は水平感染が一因?
東京医科歯科大学は3月25日、HTLV-1は水平感染によって、HTLV-1関連疾患であるHTLV-1ぶどう膜炎を引き起こし、またその炎症は強く、再発や遷延する可能性があることをつきとめ、水平感染の重要性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科眼科学分野の鴨居功樹講師、大野京子教授、堀口乃恵非常勤医師、輕部央子大学院生の研究グループが、東京大学医科学研究所(東條有伸教授・病院長)、東京大学大学院新領域創成科学研究科(内丸薫教授)、国立感染症研究所(浜口功部長)、聖マリアンナ医科大学(脳神経内科:山野嘉久教授、医療情報実用化マネジメント学:渡邉俊樹特任教授)との共同研究として行ったもの。研究成果は、「THE LANCET Infectious Diseases」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
世界保健機関(WHO)をはじめ、世界中から注目を集めているウイルスであるHTLV-1は、世界で3000万人以上、日本に100万人前後の感染者がいると推定されるウイルスで、先進国の中で日本に最も多くの感染者が存在する。このウイルスは成人T細胞白血病、HTLV-1関連脊椎症、HTLV-1ぶどう膜炎など、ヒトに病気を起こすため、先進国の中で最も感染者が多い日本は、このウイルスに対して率先して取り組む責務がある。
長らく、成人T細胞白血病などのHTLV-1関連疾患は、垂直感染(母子感染)によって起こると考えられていた。しかし、近年の調査によって、東京など都市部における感染者の増加が指摘され、その一因は、水平感染によるものと推定されている。そこで、水平感染の意義を明らかにするために、水平感染によって生じたHTLV-1関連疾患の情報が求められていた。
水平感染の「HTLV-1ぶどう膜炎」症例を発見、積極的な周知・啓発が必要
HTLV-1関連疾患であるHTLV-1ぶどう膜炎は、これまで水平感染によって起こるという報告はなく、他の関連疾患と同様に、主に垂直感染(母子感染)によって発症する疾患と考えられていた。今回の研究では、東京医科歯科大学、東京大学医科学研究所において多数例のHTLV-1関連眼疾患を診療する中で、母親のHTLV1感染が否定され、水平感染と確定したHTLV-1ぶどう膜炎を発見し、長期に渡るフォローアップを行なった。その結果、眼内炎症が強く生じ、また炎症の再発・遷延が起こる可能性があることをつきとめた。
今回の報告により、これまで垂直感染によって起こると推定されていたHTLV-1ぶどう膜炎は、水平感染によって生じることが示され、水平感染はHTLV-1がヒトに病気を引き起こす重要な感染経路であることが明らかとなった。また、水平感染によるHTLV-1ぶどう膜炎は、非常に強い炎症・再発・遷延が起こる可能性があり、視力障害と、それに続く生活の質の低下につながる。「東京など都市部の感染者増加の一因が水平感染とされていることもあり、水平感染で病気を引き起こすHTLV-1感染症に関して、積極的な周知・啓発が必要と考えられる」と、研究グループは述べている。
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