国内および検疫で確認された新規変異株の状況把握のために
国立感染症研究所は3月9日、日本における感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される、新型コロナウイルスの新規変異株症例について、2021年2月26日時点の状況を公表した。
画像は感染研サイトより
感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株の感染者が世界各地から報告され、いくつかの国ではこれらの変異株が感染者に占める割合が上昇傾向にある。国内においても、特に英国で最初に検出されたVOC-202012/01、南アフリカで最初に検出された501Y.V2、ブラジルからの帰国者において日本で最初に検出された501Y.V3の流行が懸念されており、これらを含む新規変異株の流行状況のモニタリングと特性の評価が求められる。今回の報告は、国内および検疫で確認された新規変異株の状況把握を目的として行われ、厚生労働省の収集した新規変異株症例情報(令和3年2月26日時点)、および、HER-SYS(発生届)情報(令和3年3月8日時点)を用いて、新規変異株陽性者の特性についてまとめられた。
小児と30代、40代を中心に、渡航歴のない感染者が各地で増加
厚生労働省が公表した症例数は207例(うち国内症例158例、検疫症例49例)だった。このうち、HER-SYS情報が突合できた症例は161例だった。国内・検疫症例ともに、性別は男女それぞれ50%程度だった。年齢は、国内症例では10歳未満、30代、40代に多く、検疫症例では30代、40代に多かった。検出された株の多くがVOC-202012/01(国内症例の96%)だった。国内症例において、渡航歴ありは6%、渡航歴なしは94%だった。渡航先としては英国が最も多かった。
診断時において重症者は認められなかった。症例の経過の観察を経た情報ではないために重症者の傾向については、同報告の段階では不明である。公表日別の報告症例数の推移をみると、2月上旬から、国内症例の報告が増加傾向にあった。また、発症日別の報告症例数の推移を見ると、1月下旬から発症者数が増加傾向にあった。
変異株の発生動向に注意しつつ、継続的なモニタリングと予防が必要
SARS-CoV-2陽性者のうち、検査の頻度、スクリーニング検査がカバーしている程度には地域差があることから、今回の結果の解釈は慎重に行う必要がある。変異株の検査が増加している状況もあるが、報告数は増加傾向にあると考えられることから、引き続き変異株の発生動向に注意しつつ、クラスターの早期検知と早期対応、個人においては3密の回避、マスクの着用、手指衛生を継続することが必要だとして、同報告は締めくくられている。