「血中コア型フコシル化PSA」を短時間・高感度に測定
近畿大学は2月19日、前立腺の上皮細胞から分泌される腫瘍マーカー「血中コア型フコシル化PSA」を短時間かつ高感度に測定するシステムによって、高悪性度前立腺がんを診断する方法を確立したと発表した。この研究は、同大医学部泌尿器科学教室の藤田和利准教授ら、大阪大学大学院医学系研究科の研究グループによるもの。研究成果は、医学雑誌「International Journal of Cancer」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
前立腺がんは、近年高齢化とともに発症数が増加し、国内では男性で最も多いがんとされている。年間約9万1,000人が発症し、進行度と悪性度によって分類され、5割程度が中高悪性度であると言われている。
悪性度の低いがんに対しては、がんと診断されても治療を行わずに経過観察をすることがある一方で、悪性度が高い場合は、転移がなければ手術(ロボット支援前立腺全摘除術)や放射線治療が行われ、転移があればホルモン療法などが選択される。そのため、治療方法を決める際には、進行度だけでなく、この悪性度を正しく診断することが非常に重要となる。
しかし、広く行われているPSA検査は悪性度と関連がないため、治療が不要な人まで異常値を示すことで不必要な検査が行われ、問題となっている。
血中のコア型フコシル化PSAにおけるフコシル化とは、がんおよび炎症における重要な糖鎖修飾の一つであり、フコースという糖の一種が付く部位によって「コア型」「Lewis型」「H型」の3種類が存在する。研究グループは、これまでに質量分析による血清タンパクの糖鎖構造解析を行い、前立腺がん患者では他のがん種と異なり、フコースが糖鎖の根元につくコア型フコシル化が優位であり、悪性度の指標となるグリソンスコアと関連していることを報告してきた。
90%の高悪性度前立腺がんを検出、36%の不要な前立腺生検を回避
今回の研究では、血中コア型フコシル化PSAに着目し、高悪性度前立腺がんのバイオマーカーとしての有用性を検討した。252人のPSA高値で前立腺生検を受けた患者の血清を用いて調べたところ、血中コア型フコシル化PSAとPSA値から得られるフコシル化PSA指標は、がんの悪性度の指標となるグリソンスコアと有意に関連していた。
診断能力は、従来のPSA検査よりも性能が良く、90%の高悪性度前立腺がんを検出することができ、36%の不要な前立腺生検を回避することができたという。
近大病院、臨床試験開始に向けて準備中
研究グループは、血中コア型フコシル化PSA検査を従来のPSA検査と共に行うことにより、高悪性度前立腺がんの効率的検出につながり、患者負担の高い不要な生検を減らすことが期待できるとしている。
なお、近畿大学病院では、同検査の適用を目指し臨床試験を開始すべく準備を進めている。
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