アルコール依存症モデルとして知られるショウジョウバエで解析
東北大学は2月18日、ショウジョウバエをモデルに、飲酒量が日に日に増大する脳内メカニズムを発見したと発表した。この研究は、同大大学院生命科学研究科の市之瀬敏晴助教(学際科学フロンティア研究所兼任)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Repots」に掲載されている。
画像はリリースより
アルコールは脳の報酬系に作用し、一時的な楽しい気分をもたらす。しかし、飲みすぎが習慣化すると飲酒量を自分の意思でコントロールできなくなり、アルコール依存症を発症するリスクが増大する。ヒトは酒を好む生物だが、多くの哺乳類にとってアルコールは毒であり、ヒトは例外的な種といえる。自然界においてアルコールは主に発酵した果実に存在し、人類の酒好きは果実食とともに進化したと言われている。
ショウジョウバエは英語でFruit flyと呼ばれ、果実を主食として繁殖する。ショウジョウバエも昆虫の中では例外的にアルコールをよく好み、アルコールを与えると、その摂取量が日に日に増大するアルコール依存症モデルとして知られている。
D1ドーパミン受容体が増加し、さらにアルコール摂取促進
今回、研究グループは、ショウジョウバエのアルコール摂取量が増大するメカニズムを解明した。アルコールを自由に繰り返し飲んだハエはアルコールを与えられなかったハエに比べ、脳内で快楽を伝達するD1型ドーパミンの受容体の量が増えていた。
また、アルコール摂取の増大を妨げるためには、ドーパミン放出の阻害、もしくはD1ドーパミン受容体遺伝子の破壊が効果的であることが判明した。さらに、人工的にD1ドーパミン受容体の量を増大させたところ、通常のハエに比べて異常にアルコールを摂取するようになることが観察された。研究グループは、「D1ドーパミン受容体は餌の匂いの記憶など脳の高次機能に重要な役割を果たすことが知られているが、本研究により、その過剰な活性化は飲酒量の増大というリスクをもたらすことが明らかになった」と、述べている。
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