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グルコキナーゼ抑制で糖尿病マウスの高血糖改善-北大ほか

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2021年02月22日 AM11:25

グルコキナーゼ抑制、膵β細胞機能・量の低下予防の可能性は?

北海道大学は2月19日、グルコキナーゼの抑制が糖尿病で起こるインスリン産生細胞の量の低下を防ぐことを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院の中村昭伸講師、大森一乃客員研究員、渥美達也教授ら、横浜市立大学大学院医学研究科の寺内康夫教授の研究グループによるもの。研究成果は、米国糖尿病学会誌「Diabetes」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

日本人の9割以上を占める2型糖尿病では、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌が糖尿病の進行につれ低下することが報告されており、インスリンを産生・分泌する細胞である膵β細胞の機能および量の低下が2型糖尿病の病態の中心であることが明らかになっている。そのため、膵β細胞の機能および量を保持する方法を確立することが、糖尿病の本質的治療につながると考えられている。

糖尿病状態で膵β細胞の機能・量が低下する要因の一つとして、高血糖状態のため、膵β細胞では多くのブドウ糖を代謝して処理しなければならないことが挙げられる。その結果、膵β細胞に多くのストレスが生じて、膵β細胞の機能・量が低下し、血糖値を下げるのに必要なインスリンが分泌できなくなり、さらなる高血糖が生じる。

そこで研究グループは、膵β細胞でのブドウ糖代謝を調節する酵素グルコキナーゼの働きを抑制することで、過剰なブドウ糖代謝を適正化することにより、膵β細胞機能・量の低下を予防し得る可能性を考えた。

糖尿病マウス、血糖値改善で生存期間延長

グルコキナーゼの遺伝子発現が約半分であるグルコキナーゼヘテロ欠損マウスと肥満2型糖尿病のモデルマウスであるdb/dbマウスを用いて、グルコキナーゼヘテロ欠損db/dbマウスを作製。そして、グルコキナーゼが欠損していないdb/dbマウスを対照とし、、生存期間、膵β細胞機能・量、発現遺伝子、ミトコンドリアの形態、代謝産物などについて比較検討した。

その結果、db/dbマウスに比べ、グルコキナーゼヘテロ欠損db/dbマウスでは、膵β細胞量、インスリン分泌量が多く、高血糖が改善し、生存期間も長くなっていることが判明。また、グルコキナーゼヘテロ欠損db/dbマウスの膵島では、db/dbマウスの膵島に比べ、ストレス関連遺伝子の発現が減少しており、膵β細胞の機能や成熟に重要な転写因子であるNkx6.1やMafAの発現が上昇していた。

さらに糖尿病マウスでみられるミトコンドリアの形態異常およびブドウ糖代謝パターンの異常が、グルコキナーゼヘテロ欠損db/dbマウスで改善していることがわかった。

以上の結果より、グルコキナーゼの働きを抑制することで過剰なブドウ糖代謝が適正化され、膵β細胞機能・量の低下を防ぐことを実証。さらに、その結果、糖尿病マウスの血糖値を改善し、生存期間も延長させることを明らかにした。

糖尿病の本質的治療につながる可能性

糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)はいずれも約1000万人と推計されており、糖尿病有病者は増加の一途をたどっている。糖尿病は進行すると失明に至る場合や透析治療を余儀なくされる場合があるだけなく、心筋梗塞や脳梗塞などの発症が増加する。そのため本人のみならず介護に関わる家族等の負担、さらには医療費増加の一因となっており社会全体の問題に直結する。すなわち、糖尿病の予防および根治に向けた治療法の確立は、医学的のみならず社会的、経済的観点からも早急に対応しなくてはならない。

今回発見した「膵β細胞内の過剰なブドウ糖代謝を適正化することにより、糖尿病でみられる膵β細胞機能・量の低下を予防する」という概念は、新たな糖尿病の予防法・治療法の提唱であり、グルコキナーゼの抑制は糖尿病の本質的治療につながる可能性があるという。今後、創薬などを通じて、臨床応用に展開できることが期待される、と研究グループは述べている。

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