痩せた若年女性の耐糖能異常の割合と、その特徴は?
順天堂大学は2月16日、日本人の痩せた若年女性(BMI18.5kg/m2未満)に食後高血糖となる耐糖能異常が多く、その原因として、主に肥満者に生じるインスリン抵抗性や脂肪組織の異常が関連することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科代謝内分泌内科学・スポートロジーセンターの田村好史先任准教授、河盛隆造特任教授、綿田裕孝教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
食後高血糖となる耐糖能異常は、主に肥満が原因で生じ、糖尿病や心血管障害のリスクとなることが知られている。欧米諸国では若年層における肥満の増加とともに耐糖能異常も増加してきており、肥満の若年者に対する減量指導が推進されている。日本では、痩せた女性(BMI18.5kg/m2未満)の比率が先進諸国の中で最も高く、特に若年女性では、痩せ願望を反映してその比率が約20%と極めて高くなっている。
最近の研究により、意外なことに痩せていても肥満と同等に糖尿病のリスクが高いことがわかってきた。しかし、あくまでも中年以降を対象としたデータであり、痩せた若年女性でも糖尿病のリスクが高いのか、高いとすると、なぜ痩せていてもそのような異常が生じるのかに関しては全く明らかになっていなかった。そこで今回、研究グループは痩せた若年女性の耐糖能異常の割合とその特徴を明らかにすることを目的に調査を実施した。
痩せ型の女性はエネルギー摂取量/筋肉量が少なく、身体活動量が低い
研究では、18-29歳の痩せ型(BMI16.0-18.49kg/m2)の若年女性98人と標準体重(BMI18.5-23.0kg/m2)56人を対象に、耐糖能異常かどうか判定するための検査である75g経口糖負荷試験を行い、耐糖能異常(糖負荷2時間後140mg/dl以上)の割合を調査した。また、体組成測定(DXA法)、体力測定、食事内容や身体活動量に関するアンケートも実施した。
その結果、標準体重に比べて、痩せ型の女性では耐糖能異常の割合が約7倍高いことが明らかになり(13.3%vs1.8%)、その率は米国の肥満者における割合(10.6%)よりも高い率となった。また、痩せ型の若年女性の特徴として、エネルギー摂取量が少なく、身体活動量が低く、筋肉量が少ないことがわかった。
インスリン抵抗性や脂肪組織の異常となる「代謝的肥満」が関与する可能性
続いて、痩せ型の若年女性の耐糖能異常の特徴を詳しく解析したところ、インスリン分泌が低下しているだけでなく、主に肥満者の特徴とされてきたインスリン抵抗性も中年肥満者と同程度生じていることが明らかになった。さらに、痩せているのにもかかわらず脂肪組織から遊離脂肪酸が溢れ出て、全身にばら撒かれている状態(脂肪組織インスリン抵抗性とリピッドスピルオーバー)をきたしているという予想外の結果が出たという。さらに、体力レベルが低く、糖質からのエネルギーの摂取割合が低い一方で、脂質からの摂取割合が高いということもわかった。
従来、インスリン抵抗性は肥満に伴って出現し、痩せ型の糖代謝異常はインスリン分泌障害が主体でインスリン抵抗性はあまり関係しないと考えられてきたが、今回の研究は、痩せた若年女性における耐糖能異常にも、肥満者と同様にインスリン抵抗性や脂肪組織障害が生じている「代謝的肥満」があることを世界で初めて示した。
若年女性のインスリン抵抗性や脂肪組織異常が生じるメカニズムの解明へ
今回の研究で、日本人の痩せた若年女性では耐糖能異常の比率が顕著に高い(13.3%)ことが明らかになった。痩せた若年女性の多くは食事量が少なく、運動量も少ないという「エネルギー低回転タイプ」となっており、それとともに骨格筋量も減少していることから、痩せた若年女性に対する取り組みとしては、十分な栄養と運動により筋肉量を増やすような生活習慣の改善が重要と考えられる。
また、耐糖能異常の病態に、インスリン抵抗性も関与する可能性が明らかになったが、昨今の研究でインスリン抵抗性は運動をしたり、食事の脂質摂取割合を減らすことにより改善する可能性が示唆されており、糖尿病の予防のためにそのような生活習慣の見直しが必要と考えられる。「今回の研究で見つかった痩せた若年女性のインスリン抵抗性や脂肪組織異常が生じるメカニズムについてはまだ明らかになっていないため、さらなる研究が必要だ」と、研究グループは述べている。
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・順天堂大学 プレスリリース