国循では「切らずに治す」TAVIを推進
国立循環器病研究センターは1月29日、透析患者への経カテーテル的大動脈弁置換術(略称:TAVI=タビ)治療を2021年2月1日より開始すると発表した。これは、同センター心臓血管外科部門の藤田知之部門長らによるもの。
画像はリリースより
心不全は高齢化社会において確実に広がりつつある。動脈硬化を主因とする循環器疾患は多くある中、最近特に注目されているのが、大動脈弁狭窄症だ。心不全をきたし、突然死や寝たきりの原因となりうる疾患で、重症と判定されれば、できるだけ早く専門病院での治療が必要となり、正確な診断が重要となってくる。
高齢者や併存症を持つ患者の中には、胸を切って行う開心術への抵抗がある患者もいる。そんな患者のために切らずに治すTAVIを国循は2013年より推進してきた。2020年には、国循心臓血管内科部の泉知里部長が班長を務めた弁膜症ガイドラインの改訂が行われ、より若年の患者にTAVIの適応は広がった。
より低侵襲な大動脈弁狭窄症の治療を透析患者へ実施可能に
また、2021年2月1日よりこれまで禁止されてきた透析患者へのTAVIが施設限定で保険償還された。全国の約30の限られた施設でのみ許可された治療で、国循はその施設の1つだ。
透析患者は、動脈硬化を引き起こしやすい状態にあり、大動脈弁狭窄症を発症する患者も多い。しかし、透析患者の手術リスクは高いことが知られており、手術を躊躇する患者も多かった。今回のTAVIの適応拡大により、より低侵襲な大動脈弁狭窄症の治療を透析患者に行うことができる。研究グループは、「合併症を低減させることで結果的に医療費の抑制の期待もあるこの治療の適応拡大は、透析患者にとっては朗報と考える」とし、国循では、透析に携わる医師と連携し、ハートチームを通して透析患者が適切な治療を選択できるようにしていくとしている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース